火山噴火で脅威となる「火山灰」
世界には約1500の活火山があり、そのうち111(約7%)が日本にあります。
日本は世界的にみても活火山数が非常に多く、噴火リスクの高い国と言えます。
ただ、火山の近くに工場を持っている企業などを除き、噴火リスクについて検討している企業はあまり多くないのが現状です。
火山から距離がある企業においても降灰の影響で事業に影響が出る可能性は十分にあります。
そこで、噴火の中でも日本中の企業に関係がある「降灰リスク」について記事にまとめました。
この記事の目次[非表示]
- 1.火山灰の怖さ
- 2.火山灰がインフラに影響を与える閾値
- 3.降灰前にするべきこと
- 4.火山灰の除去方法
- 5.物流業界が気を付けるべきこと
- 6.富士山噴火だけではない
- 7.最後に
火山灰の怖さ
富士山が大噴火した場合、東日本大震災で除去されたがれき量の10倍近い火山灰を除去する必要があるとも言われています。
火山灰は雪のように自然に解けることはないため、除去作業をするまで残り続けてしまいます。
そのため、乾いた火山灰が再浮遊したり、排水路に流れて詰まったり、長期間にわたりライフラインへ影響を与える可能性があります。
〈想定されるライフラインへの影響〉
- 上水道が詰まり断水が起こる
- 下水道が詰まりトイレが使えなくなる
- 火力発電所の空気吸入口が詰まり電力が不足する
- 貯水場に降り積もり安全基準を超えてしまう、送電設備に降り積もり停電が発生する
火山灰がインフラに影響を与える閾値
火山灰が飛散すると様々な悪影響がありますが、どのくらい降ると影響が出てくるか、順に解説します。
道路
降灰の厚さが10cm以上(降雨時は3cm以上)で走行不能になるおそれがあります。
走行速度によっては、数cmでもスリップ事故等が誘発される可能性があるため、注意が必要です。
走行速度の低下による渋滞の発生や、スタック等による車両停滞が発生する可能性もあります。
鉄道
降灰の厚さが0.05cm以上でレールと車両の通電不良が起こり、運行不能となるおそれがあります。
レールの上に降灰がない場合でも停電エリアは運行不能となるおそれがあります。
空港
降灰の厚さが0.04cmから0.2cm以上で、滑走路が使用できなくなるおそれがあります。
大気中に火山灰が存在する空域では、迂回等の措置が取られる可能性が高いです。
電力
降灰の厚さが0.3cm以上で送電線がショートし、停電が発生するおそれがあります。
6cm以上で火力発電所のフィルターが目詰まりして稼働できなくなるおそれがあります。
また、太陽光発電パネルの上に0.03cm以上積もることで、発電量がゼロになるおそれがあります。
上水道
降灰の厚さが0.2cm以上で浄水場の安全基準を超えてしまい機能停止となるおそれがあります。
1cm以上で浄水場のろ過装置が目詰まりして機能停止となるおそれがあります。
※火山災害についての参考ブログはこちら
降灰前にするべきこと
- ドアや窓を閉める
- 壊れやすい電化製品や機械にカバーをする
- フィルターが目詰まりしないように、通気口、換気扇、室外機などを塞ぐ
- 下水道が詰まらないように、雨どいや配水管を排水溝からはずす
- 排水溝が詰まらないように、火山灰と水が地面に流れるような状態にする
- 自動車などを室内に移動する
これらの作業を噴火が確認されてから開始し、火山灰が降り注ぐ前に完了する必要があります。しっかりとタイムライン等を策定し、平時から訓練を通して習熟しておかなければ間に合わない可能性があります。
火山灰の除去方法
火山灰は雪などと異なり溶けることはないため、人の手で清掃して取り除く必要があります。除去後の火山灰は、克灰袋に詰めて行政に回収してもらいます。※火山灰は、通常のごみと分ける必要があります。
火山灰を除去するときは粉塵が出るため、防塵マスクと防護ゴーグルを必ず着用しましょう。肌が弱い方は長袖などを着用した方が安心です。
マスクは「防じんマスクの国家検定規格」の認定を受けた製品を準備しましょう。花粉対策用マスクでは、マスク内部に粉塵が入り込む可能性が高くなります。
また、積もった火山灰をショベルや箒などで取り除く場合は、事前に少し水をかけると粉塵が出にくくなります。あまり水をかけ過ぎると火山灰が重くなり除去しにくくなるので、少し湿らせる程度が最適です。
なお、火山灰はとがった結晶質の構造をしているので、ふき取ったり払い落としたりするときに、付着しているモノの表面を傷つける可能性があります。電化製品や自動車に付着した火山灰を掃除する場合は、洗浄液で濡らした布やスポンジで、こすらずに軽くはたくようにするのがポイント!
除去時に必要な防塵マスク、ショベルはレスキューナウオンラインショップからご購入可能です。
物流業界が気を付けるべきこと
火山灰が降り積もっている場合、可能な限り自動車の運転は避けるべきと言われています。
道路が滑りやすくなっているだけでなく、自動車の故障の原因となったり、火山灰を舞い上げる原因にもなります。
ただ、物流が止まってしまうとサプライチェーン全体に影響を与えてしまうため、実際には走行しなければいけないケースが出てくると思います。
その場合、以下の点に気を付ける必要があります。
- 火山灰などで視界が悪くなったら、ヘッドライトをつけてゆっくり走行する
- ワイパーを使うときはフロントガラスを傷つけないよう、ウインドウォッシャー液をたっぷり使用する
- エンジンオイルとエンジンオイルフィルター、エアフィルターを頻繁に交換する
※降灰後は買占めも予想されるため、平時から多めに備蓄しておくことをオススメします - 上記以外の部品についても火山灰が入り込んでいる可能性があるため、自動車内部も含めて毎日清掃する
富士山噴火だけではない
箱根山、浅間山など首都圏に近い火山が噴火すると、富士山噴火以上に大きな影響が出る場合も想定されます。
自社の物流ラインなども含め、火山噴火の影響を受ける可能性がある拠点はないか確認する必要があります。
例)2009.2.2浅間山で小規模な噴火があり、北風が強かったため大手町で降灰が確認されました。
図:「我が国の活火山の分布」(気象庁ホームページより)
最後に
弊社が提供する「レスキューWeb MAP」では、噴火速報や火山性微動などの火山情報をリアルタイムに配信しています。
また、地図上で活火山を中心に何km圏内の事業所を抽出し、自動でリストを作成する機能もあります。
詳しくは下記サービスページよりご覧ください。