
クライシスコミュニケーションとは?リスクコミュニケーションとの違い
こんにちは。レスキューナウです。
皆様の所属する組織では、自然災害や不祥事などの危機発生時において、組織内外とどのようにコミュニケーションをとるか、事前の準備はお済みでしょうか。
日頃から重要とされるコミュニケーション。危機が発生した際には、その重要性は一層高まります。さらに、コミュニケーションの巧拙が、組織の事業継続に影響を及ぼすことさえあります。
本記事では、クライシスコミュニケーションの基本的な考え方とその重要性、リスクコミュニケーションとの違い、そして具体的な対策のポイントについて解説します。
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クライシスコミュニケーションとは
クライシスコミュニケーションとは、組織が予期せぬ危機や重大な問題に直面した際、的確な情報を迅速に伝えるための一連のコミュニケーション活動を指します。
例えば、地震・台風での被災や組織内の不祥事といった危機が発生した際、組織が株主、従業員、顧客、地域社会といった様々な関係者(ステークホルダー)や一般の人々に対し、それぞれの立場の人が求めている情報を迅速に提供・共有するためにクライシスコミュニケーションという考え方が有効です。
クライシスコミュニケーションの目的
では、クライシスコミュニケーションの目的はどのようなものなのでしょうか。主に以下の4点が挙げられます。
・情報の正確性を確保し、誤解や混乱を防ぐこと
・従業員、顧客、株主、地域社会など、すべての関係者との信頼関係を維持・強化すること
・組織の評判(レピュテーション)を守り、ブランド価値の毀損を最小限に食い止めること
・人々の安全を確保し、二次被害の発生を防ぐこと
これらの目的を達成することで、結果的に組織の事業継続を大きくサポートすることになります。
クライシスコミュニケーションの重要性
クライシスコミュニケーションは企業の事業継続において重要な役割を果たします。内閣府発行の「事業継続マニュアル」では「情報発信」として危機発生時のコミュニケーションについて以下のように記述されています。
不測の事態に直面したとしても、企業・組織の活動が利害関係者から見えない、何をしているのか全くわからないといった、いわゆるブラックアウトを起こすと、取引先が代替調達に切り替えるなど、自社の事業継続に不利な状況が進む。復旧可能性の情報を発信できずに時間が経過すると、社会的責任を果たせないことにつながる。 このような状況を防ぐため、取引先、顧客、従業員、株主、地域住民、政府・自治体などへの情報発信や情報共有を行うための自社内における体制の整備、連絡先情報の保持、情報発信の手段確保なども必要である。
(内閣府「事業継続ガイドライン (令和5年3月) 」より)
逆にクライシスコミュニケーションを怠った場合、情報共有の不備によりマイナスの影響が生じてしまう可能性があります。
例えば、適切に情報が提供されないことにより、情報が歪んで伝わったり、誤解や不信感が生じたりする可能性があります。たとえ、誤情報で生じたものであっても、組織の評判が著しく傷つくだけでなく、経済的な損失や訴訟が生じることなどで企業の事業リソースに影響を与える可能性もありえます。
以上のように、クライシスコミュニケーションが適切に実践できるか否かは組織の事業継続において極めて重要なポイントといえます。また、見方を変えれば、組織が社会からの信頼を再構築し、さらに強化する機会にもなり得るということもできます。
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クライシスコミュニケーションとリスクコミュニケーションの違い
クライシスコミュニケーションとよく似た言葉に「リスクコミュニケーション」があります。
クライシスコミュニケーションは危機が発生してからの対応であり、リスクコミュニケーションは危機が発生する前の備えであるということができます。端的に言えば危機発生の『前後』で役割が異なると理解するとよいでしょう。
クライシスコミュニケーションは「発生した危機」への「対応」
クライシスコミュニケーションは、先述した通り、組織が予期せぬ危機や重大な問題に直面した際、的確かつ効果的な情報を迅速に伝えるための一連のコミュニケーション活動であり、既に発生してしまった危機(クライシス)に対し、組織が的確かつ迅速に情報を収集・整理し、関係各所へ伝達・説明を行う活動を主とします。
ここで言う「危機」には、自然災害による自社設備の損壊といった物理的な被害だけでなく、組織内部の不祥事や風評被害なども含まれます。
クライシスコミュニケーションでは、組織は影響を受ける可能性のある全ての人々(従業員、顧客、株主、地域社会など)に対し、収集・整理した正確な情報を速やかに提供するとともに、具体的な対応策や今後の見通しを示す必要があります。
その際、専門家の知見も活用し、透明性の高い情報開示を心がけることも重要です。
リスクコミュニケーションは「潜在的リスク」への「備え」
リスクコミュニケーションは、将来的に「危機」へと発展する可能性のある潜在的なリスクに対し、事前に関係者間で情報を共有し、予防策や対応策を共に検討・準備していくコミュニケーション活動です。
ここでの「リスク」も「危機」と同様に、施設の老朽化やシステム障害の可能性といった物理的・技術的なものから、コンプライアンス違反の恐れや情報セキュリティの脆弱性といった非物理的なものまで、幅広く含まれます。
リスクコミュニケーションの主な目的は、潜在的なリスクを特定・予測し、それらが実際に危機として顕在化することの防止や軽減を図ることです。そのため、リスクの性質や影響範囲、発生確率などを多角的に評価し、その評価結果に基づいて「危機」に対する具体的な予防策や軽減策を策定することが重要です。
クライシスコミュニケーションを成功に導くための3つのポイント
これまでクライシスコミュニケーションの目的や重要性、特徴について触れてきましたが、ここでは実際の危機発生時に求められるコミュニケーションの基本と具体的なアクションにおけるポイントを3つ紹介します。
クライシスコミュニケーションの3つの基本
クライシスコミュニケーションを成功させるためには何をすればいいのでしょうか。
まずは、以下の3つの基本要素を抑えておくことが必須となります。
(1)事前準備
危機発生時に冷静かつ効果的な対応を行うためには、平時からの周到な準備が不可欠です。そこで、危機が発生する可能性に備え、あらかじめ具体的な危機シナリオと対応策、コミュニケーションプランを策定します。
また、危機対応のための専門チームを編成し、責任者や担当者を明確に定め、迅速な対応が可能な体制を整えておくことも重要です。
(2)リアルタイムの情報共有
危機が発生した際には、迅速に組織内外の正確な情報を収集・整理を行い、関係者としっかり共有することが極めて重要です。
情報共有をしっかりと行うことで、不確実性から生じる憶測やデマの拡散を防ぎ、混乱や誤解を最小限に抑えることができます。
(3)透明性と誠実さ
ステークホルダーとの信頼を築き、それを維持するためには、情報を隠蔽したり、ごまかしたりすることなく、誠実な姿勢で対応することが求められます。もし、隠蔽や情報の歪曲を行った場合、一時的に事態を収束させたように見えても、発覚した際のリスクは計り知れません。
そのため、たとえ組織にとって不都合な情報であっても、透明性を持って公開し、真摯に対応する姿勢が、長期的な信頼関係構築の鍵となります。
クライシスコミュニケーションを計画・実践する際の3つのポイント
クライシスコミュニケーションにおける3つの基本を遵守するために、具体的にはどのような行動を起こせばいいのでしょうか。具体的には3つのポイントがあります。
(1)実効性のある計画策定による事前の備えを行う
予期せぬ危機に効果的に対応するためには、事前に実効性のあるクライシスコミュニケーションの計画を策定します。
計画策定の最初のステップは、どのような危機を想定し、組織としてどこまでの範囲で対応するのかを明確に定義することです。想定する状況と対応範囲が定まったら、次に各部署および担当者の役割と責任範囲を具体的に設定し、危機が発生した際、誰が何をすべきかを明確にしておく必要があります。
迅速かつ正確な情報収集・整理を行うための具体的な手段と体制を確立することも、計画策定における不可欠な要素です。組織内部の情報を正確かつ迅速に集約できる体制を構築することはもちろん、外部からの情報収集にあたっては、官公庁やインフラ事業者など信頼性の高い情報源から収集先をあらかじめ定めておき、優先的に活用する方針を定めます。
また、報道機関からの情報を利用する際は、必ず複数の情報源を確認し、クロスチェックを行うことで、情報の正確性を担保します。こうして集めた情報の収集・整理には多大な手間と時間を要するため、効率化を図るための専用ツールの導入も有効な選択肢として検討すべきでしょう。
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(2)危機発生時にステークホルダーやマスコミとの誠実なコミュニケーションを心がける
収集・整理した情報をもとに、いかに適切かつ誠実なメッセージを構築し、危機の影響を受ける可能性のある社内外の全ての人々に確実に届けるかが、クライシスコミュニケーションの成否を分ける最も重要なポイントです。
クライシスコミュニケーションを上手く行うには、危機の原因、現状の影響範囲、そして組織としての具体的な対策について、明確かつ分かりやすく伝えることが求められます。同時に、最大限の透明性を確保することで、信頼を構築し、維持することを目指します。
情報・メッセージを伝える際には、一方的な情報発信に終始するのではなく、影響を受けるステークホルダーの立場や心情、そして何を知りたいのかといったニーズを深く理解しておくことも重要です。
それぞれの関係者が抱える不安や疑問に寄り添ったコミュニケーションこそが、その後の良好な関係性の維持・強化に繋がります。例えば、従業員に対しては雇用の安定や安全確保に関する情報を、顧客に対しては製品・サービスの供給状況や代替策を、株主に対しては業績への影響と今後の見通しといったように、ステークホルダーの立場に応じた情報提供が求められます。
また、情報を発信する際は可能な限りリアルタイムで、かつ正確に提供することが求められます。情報の遅延や不確実性は、不必要な憶測や不安を助長する要因となります。このことは、ステークホルダーだけではなく、外部への情報発信において重要な役割を果たすメディアに対しても同様です。
情報・メッセージの発信を迅速に行うことで、憶測や誤情報による情報の歪曲を可能な限り防ぎます。特に社会的な関心が高い危機の場合には、対応のスピードがメディアの報道におけるトーンを左右することも少なくありません。この場合はとにかく迅速に事実情報を提供し、透明性のある姿勢を明確に示すことが、組織の評価を守る上で効果的だといえます。
(3)訓練とフィードバックの活用による継続的な計画の改善を行う
もちろん、事前の想定と計画の策定だけでは十分実効性があるとはいえません。実際に危機が発生した際に計画が効果的に機能するよう、クライシスコミュニケーションの対応にあたるメンバーへの研修のほか、危機を想定した定期的な訓練も不可欠です。
訓練の目的は、単に手順を確認するだけでなく、計画や対応手順そのものを継続的に見直し、より実効性の高いものへと洗練させていくことにあります。加えて、チームメンバー間の連携を強化し、極度のプレッシャー下でも的確な優先順位付けと迅速な意思決定を行えるようにするためにも、実践的な訓練は極めて重要です。
さらに、危機対応後や訓練後には、関係者から寄せられたフィードバックを真摯に受け止め、収集・分析し、計画改善や今後の対応策に活かす姿勢が求められます。ステークホルダーの声に耳を傾けることは、信頼関係の強化に繋がるだけでなく、組織の危機管理体制そのものを強化する貴重な機会となりえるのです。
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本記事では、クライシスコミュニケーションの基本から実践のポイントまで紹介してきました。
危機はいつ、どのような形で訪れるか予測困難ですが、事前の備えと誠実な対応によって、その影響を最小限に抑え、さらにはステークホルダーとの信頼関係を再構築・強化する機会とすることも可能であることが、記事を通じて少しでも伝われば幸いです。
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