実体験から学ぶ!近隣で火災発生したら?
最近、工場や倉庫での火災発生のニュースをよく目にします。もし近隣で火災が発生した場合、どのような行動が適切でしょうか?すぐに避難すべきか、延焼の可能性がなければ気にする必要はないのか?
レスキューナウ従業員の体験談をもとに、近隣で火災が発生した場合の正しい行動を解説します。
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近隣火災は5人に2人が経験している
近隣火災について、レスキューナウ従業員にアンケートを行ったところ、29人中11人が近隣で火災が発生した経験があると回答しました。約4割が近隣火災の経験があることに、ブログ担当は意外に多いなと驚きました。
(n=29)
近隣火災の経験があると回答した11人のうち、火災に気がついたタイミングは発生直後と消防の到着時がほぼ同数で、避難をしたのは2人、消火活動をしたのは1人。その他で119番通報した人は2人だけでした。
これらから、近隣火災の経験は意外と多いものの、身の危険に関わるほどの規模、近さでの火災発生はさほど多くないことが伺えます。
(n=11、複数回答可)
(n=11、単数回答)
ところが、当時の状況で具体的にとった行動などを質問したところ、様々な回答が返ってきました。
近隣火災で避難した体験談「まさか!」
近隣で発生し避難をした2名とも「まさか、火事に遭遇はしないだろう」と、はじめは避難をするほどの火事が起きていると理解できなかったそうです。事業の特性上、災害を身近に感じているはずの弊社従業員でさえも、正常性バイアスにかかってしまうのですから、おそらく多くの方が近隣火災を認知しても「きっと自分は大丈夫」と感じてしまうのではないでしょうか。
他の住人に避難を呼びかけるなど、日頃のコミュニケーションが功を奏したことも共通点です。
避難指示を受けたら安全確保を最優先し直ちに避難すべきですが、すぐに持ち出せる最低限の貴重品や避難所が開設されない場合の一時避難先を普段から用意しておくと、少しでも落ち着いて行動できるかもしれません。
自身で具体的にとった行動や注意したこと
自宅マンションの下の方の階で火災が発生し、消防の指示で避難しました。
もともと賑やかな場所で消防や救急の音は割と日常的であることや、真夜中だったこともありボーっとしていましたが、そういえば非常ベルがけたたましく鳴っていて、え??まさかここ?という感じで状況を把握したときは動揺しかなかったです。
ただ上から覗き込んでみると、実際に火の手が上がっているわけではなく場所も離れていたので、どこか大丈夫と判断している自分がいて、巡回の消防士から玄関ドアを叩かれなければ避難はしなかったかも知れません。
同階に足の不自由な一人暮らしのご老人が居たのですが、当然エレベーターも使えず、その方も逃げなくていいと言い張っていて、消防と一緒に説得し避難しました。よく会話を交わしていた方なので可能でしたが、日頃のコミュニケーションの重要性を感じました。
深夜の帰宅途中、ある店の前から急に煙が出てきました。最初はまさか火事とは思わず「バルサンでも焚いてるのだろう」などと考えました。人間には正常性バイアスがあって「何か危機が発生していても大丈夫、問題ないと捉えてしまう」と知ってはいましたが、まさか自分自身もそうなるとは思いませんでした。
15秒ほど煙を見てはっと火事と気づき、119番通報しました。初めての119番通報だったので、通報すること自体に焦ってしまいました。
その後、急いで自分の住んでいたビルへ戻り、下の階に住んでた老夫婦の家のチャイムを鳴らして、火災発生を知らせ避難を呼びかけ、自分も一旦部屋に戻り荷物を置いたりして外へ再度避難しました。
消火活動、鎮火後等に、消防の方から受けたアドバイス
今思えば当然ですが、消防はとにかく避難をさせることが最優先で、住人も直ちに従わなければなりません。マンションは住居スペースにも定期的に消防点検が入りますが、ついつい居留守を使ってしまうことも。アドバイスではありませんが、いざというときに機能しなければ意味がないので受けるようにしています。
当時住んでいたのが古い市場の中ゆえかもしれませんが、火災が発生すると辺り一帯封鎖され、たとえ目の前にある家で火の手が回っていない状況に見えてもしばらく帰れなくなります。この時は深夜かつ翌日も仕事という状況にも関わらず、一旦帰って財布と電話だけ持って外に避難したら入れなくなり、困ってしまいました。
いざという時に持ち出す物、避難する先(火災の場合は大規模でもないと避難所も開設されず、深夜でも行き場が無くなる)を考えておいたほうが良いと思います。この時はたまたま友達が火事と知って連絡をくれ、一晩明かす先が見つかりました。
また、一度通報すると消防と警察から何かと連絡や手続きがあり(現場の状況説明に呼ばれる、その内容が書かれた調書を確認して印鑑押す、等)、回数や時間は僅かですが期間としては半年ぐらい引っ張り、その間なんとなく落ち着きませんでした。
近隣火災で避難しなかった体験談
避難の必要がなかった場合でも、二次被害の可能性があることも回答から見えてきました。
まずは119番通報したり付近の住人に火災発生を知らせたりと周知を行ったことは、避難した場合と同じでした。
延焼していなくても煙が流れてくることはあるため、風向きを確認して窓閉めたり、風上に移動したりすることで煙による被害を避ける行動をとった人が数名いました。さらに、風上で煙の影響がなくても熱が伝わり窓枠やガラスが熱くなり、高温でガラスが割れる可能性があることから、延焼しない距離や位置でも別の危険があると判明しました。
火災発生現場付近では数日通行止めになることがあり、自身も消防活動の妨げにならないよう注意するといいでしょう。体験を機に消火器や消火栓の場所を確認した人もいました。また、報道やSNSで消火活動の状況や最新情報の収集をしても意外と情報が得られず不安になることもあったそうです。
自身で具体的にとった行動や注意したこと
既に消防が到着して消火活動をしていたので、燃え広がる等の危険性がないことを確認して家に戻った。隣とかすごく近くではなく、1区画くらい斜めの場所で、燃え広がらない限りは危険性はないと判断できたので。
近隣の工場で火災。隣接しているわけではないため避難は必要ありませんでしたが、煙がひどく自宅マンションの方へ流れてきた(ギリギリ直撃は回避)ので、窓は絶対に開けないよう言われました。
大規模施設向けの火災報知器が聞こえ、見渡したら黒煙を確認。向かったところ火勢熾烈で初期消火断念。出火建物近隣の家のドアをたたくなどして火事を知らせた。
避難や周辺を通る際は消防隊員の活動の妨げにならないように注意した。煙を避けるためなるべく風上にいるようにした。
冬の薄曇の休日、窓を閉め切った状態で自宅にいたとき雨戸の戸袋に何かがパチパチ当たるような音が聞こえてきて、近所の子が石でも投げていたずらしているのかと思って様子を見に行ってみると、斜め向かいの家から火が出ていた。パチパチと聞こえていたのは家が燃えている音だった。
・発見時にまず風向きを確認(風上だった)
・消防に119通報(火元の家から既に通報されていたと思われる)
・隣の住人に知らせる
・覚知した時には消火器では消せないレベル(2階から出火していて窓から炎が上がっている状態)だったので静観
自宅近くでボヤが発生した際は、特に避難や消火活動は行いませんでした。消防車が来ていたので気づきました。後日、消防車が水を吸い上げる場所、近所の消火器置き場を確認しました。
実家近くで火災が発生した際は、線路付近という事もあり、TVで速報が流れ、、不安で情報収集をしました。twitterなどのSNSから情報を知ろうとしましたが、なかなか詳細は分からなかったです。幸い、避難するほど迄ではありませんでしたが、実家は高齢者のみの住まいなので情報収集や避難などの対応に不安を感じました。
オフィスや自宅からも近い建設中のマンションで火災。自宅はここから約150m離れていますが、外からの工事中のような音で気が付きました。ベランダから火災の様子が確認でき、焼けたにおいや時折熱も感じるほどでした。
隣の建物でしたが延焼の危険はないということで移動しないように要請されたと記憶しています。
避難、消火活動、鎮火後等に、消防の方から受けたアドバイス
鎮圧後に再燃したのが印象的だった。出火元の会社が翌日には自宅に詫び状と衣類用洗剤をもってきたことが好印象で、BCP的対応(近隣対応)がちゃんと決まっていると思った。
消火活動中の隊員に窓から離れるよう注意された。窓から様子を見ていたが、注意されて窓枠を触ってみたら思わず手を離してしまうぐらい熱くなっていたので驚いた。風上だから延焼はない=自宅は大丈夫と思い込んでいて、炎による高温の影響で窓ガラスが割れる可能性までは想定していなかった。窓枠のあまりの熱さに「割れるかもしれない」と思い、ガラスが割れた場合の飛散を最小限にするために火元側の窓は全てカーテンを閉め、窓から離れた。
翌日、付近の道路を通ろうとしたところ、マンション崩壊の可能性があるため通行止めになっていました。
火災の発生数、発生原因の傾向は?
下記はレスキューナウが覚知した2021年の全国の工場火災の発生件数です。工場火災は季節に関係なく一年中発生していることがわかります。
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
24件 |
22件 |
32件 |
39件 |
29件 |
35件 |
32件 |
34件 |
21件 |
24件 |
26件 |
36件 |
とくに最近は倉庫へ放火される事例も目立ちます。放火の場合は火の回りが早いため被害が大きくなりやすいです。また、工場での火災により従業員が亡くなられたケースも報道で散見されます。火災で人的被害が生じてしまったケースは、逃げる方向を間違えた等、初期消火や避難方法が正しくなかった場合が多いようです。
住宅火災においても、コロナ禍で在宅勤務や自宅で活動する時間の増加に関連した発火事故が発生しています。独立行政法人製品評価技術基盤機構(通称NITE)によると、過去減少傾向にあった配線器具の発火事故が2019年を境に増加していました。
(引用:
減少傾向から一転、2年連続事故増加~配線器具の火災に注意!!~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp
テレワークで大混雑~プラグ・コードの取り扱いに注意~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp))
その他にも、身の回りを清潔に保とうとしたあまり、誤ったエアコンの内部洗浄により出火したり、消毒用アルコールが暖房器具によって引火したり、キャンプ用品の誤った使用や廃棄により火災が発生したりと、様々な原因が住宅火災を引き起こします。NITEのプレスリリースでは火災を引き起こし得る製品事故や対策が紹介されていますので、ぜひご参考ください。
2022年度プレスリリース | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
(出展
・エアコンの内部洗浄による事故に注意~製造から長期間経過した換気扇・扇風機にも注意~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
・衣類や布団などの可燃物の接触に注意!~暖房器具による火災を防ぐ~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp)
・おうちキャンプを楽しく安全に~使い方・捨て方・選び方~ | 製品安全 | 製品評価技術基盤機構 (nite.go.jp))
近隣火災が発生したら取るべき行動
アンケートをもとに、近隣火災が発生したら取るべき行動を、事前、発生時、後日でまとめました。
事前の備え
- 人間には正常性バイアスがあって「何か危機が発生していても大丈夫、問題ない」と捉えてしまう傾向があると認識する
- 日頃のコミュニケーションがあるといざという時に助け合いやすい
- 定期的に消防点検を必ず行う
- いざという時に持ち出せる最低限の貴重品、避難所以外の一時避難先を考えておく
- 付近の消火栓、消火器の場所を把握しておく
- 水を備蓄しておく(放水の影響で水道水に錆が混じり濁る)
近隣火災発生時にとるべき行動
- 119番通報する(誰かが通報しているだろうと全員が思い誰もしていないことがあるので、気づいたら自分自身で通報する)
- 付近の住人に火災発生を知らせる、避難を呼びかける
- 煙を避けるためなるべく風上に移動する
- 離れていても熱気や火の粉飛ぶので、洗濯物やハンガー等は部屋に入れる(延焼防止)
- 煙が入らないように窓を閉め、換気扇を止める
- 火元側の窓は全てカーテンを閉め、窓から離れる(炎による熱が伝わり窓ガラスが高温になり割れた場合の飛散を最小限にする)
避難時や後日に気をつけること
- 現場周辺を通る時は消防隊員の活動の妨げにならないように注意する
- 現場建物の崩壊の可能性があるため、なるべく現場付近の通行は避ける
- 鎮火後に再燃する可能性があるので注意する
火災や事故、怪我人を前にすると誰でも慌てて目の前に事象に対処しがちですが、まずは「プロを呼ぶ」ことがとても大切です。
もちろんできる範囲で応急処置を行うことも大切です。しかし自分で対処することに捕らわれ過ぎると、事態が悪化、拡大した時に手遅れになりかねません。火災においては誰かが通報しているだろうと思いこまず、勇気をもって迷わず119番通報してください。
東京消防庁の東京消防電子学習室の防災訓練メニューでは、119番通報の例が動画で公開されています。ぜひ一度通報の受け答え例を見てみてください。途中に問題も出てくるので、クイズ感覚で楽しく学習できます。
自衛消防活動の基本的な流れ~119番通報~|東京消防庁 (tokyo.lg.jp)
※すぐに音声が流れますのでご注意ください。
レスキューナウのアドバイザリーサービス(訓練支援)においても、サーキット訓練の中で消防への通報や初期消火の訓練を行うことができます。リモートでの訓練をご希望の場合は、ウェブ会議方式とビデオ方式でもご支援可能です。こちらもぜひご活用ください。
近隣火災が発生したら企業が取るべき行動
企業においても近隣火災が発生した場合の対応は上記と大きく変わらないでしょう。
同じビル内で別のオフィスやフロアから火災が発生した場合は、慌てずに避難してください。予め避難経路や避難誘導係を決めておくことをオススメします。119番通報の例と同じく東京消防電子学習室で別のフロアで火災が発生した場合の避難例や階段での避難が難しい方の避難誘導例も紹介されています。
自衛消防活動の基本的な流れ~避難誘導・防火区画の形成~|東京消防庁 (tokyo.lg.jp)
※すぐに音声が流れますのでご注意ください。
また、もし自社で火災が発生してしまった場合、収束後の近隣対応(状況説明や詫び状等)も定めておくと復旧や事業再開が少しスムーズになるかもしれません。
自社の防火対策についてはこちらの記事もぜひご覧ください。
ちなみに、今回のアンケートで消火器を使用できるか質問したところ、使用できる人とできない人はちょうど半分という結果となりました。ご覧いただいている企業の皆様はどうでしょうか?これを機に社内アンケートとり、防災訓練に加えてみてはいかがでしょうか。
(n=29)
防災訓練、BCP策定はレスキューナウにお任せ
火災は身近に起こり得ると感じていただけたのではないでしょうか?これを機に火災に備えていただけたら幸いです。
レスキューナウではアドバイザリーサービスを通して防災訓練やBCP策定支援を行っています。体制構築、手順策定から、自衛消防隊や従業員向けなど役割に合わせた防災訓練支援、リモート形式による防災訓練など様々な形で対応可能です。
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その他、事前の備えとして防災備蓄のご相談も承っています。是非お気軽にご活用、ご相談ください。