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バケツをひっくり返したような雨とは?

大雨の季節がやってきました。

梅雨や台風のシーズンは、毎年のように大雨に伴う自然災害が発生しています。

特に、同じような場所で数時間にわたって強く降り、100mm~数百mmの雨量をもたらす「集中豪雨」はたびたび日本各地で起きており、もはや珍しいことではなくなっています。

今年(2024年)の梅雨入りは、平年並みのタイミングでしたが、遅くなるという見方もありました。太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱く、梅雨前線がなかなか北上してこなかったためです。

しかし、そのような状況の中でも、本格的な長雨のシーズンを前にした5月末、日本列島を通過する低気圧や前線に向かって、沖縄の南にあった台風1号周辺の暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、高知県で1時間に80mm以上の強さの雨が降るなど、九州から関東で局地的に大雨となりました。

ところで、報道などで大雨が降った時の表現として、『バケツをひっくり返したような雨』という言葉が使われているのを見聞きすることがありますが、このような「雨の強さと降り方」の表現にはどのような種類や定義があるのでしょうか?

今回のブログでは報道でよく耳にする表現について解説します。

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この記事の目次[非表示]

  1. 1.『バケツをひっくり返したような雨』とは?
    1. 1.1.雨量で5段階に分けられる
    2. 1.2.バケツをひっくり返したような雨
    3. 1.3.猛烈な雨
  2. 2.早めの避難の心がけを
  3. 3.備えあれば憂いなし

『バケツをひっくり返したような雨』とは?

『バケツをひっくり返したような雨』とは、単なる個人の感想で表現したものではなく、気象庁が「人の受けるイメージ」として定めた指標です。

気象庁は、雨の強さと、それに応じた人に及ぼす影響や災害発生の状況などを、図表を用いて表しており、これを見れば、「この強さの雨の時はこのような降り方をする」ということが視覚的に分かりやすく示されています。

気象庁「雨の強さと降り方」

1時間雨量(mm)

予報用語

人の受けるイメージ

人への影響

屋内(木造住宅を想定)

屋外の様子

車に乗っていて​​​

災害発生

10以上~20未満

やや強い雨

ザーザーと降る

地面からの跳ね返りで足元がぬれる

雨の音で話し声が良く聞き取れない

地面一面に水たまりができる

長く続くときは注意が必要

20以上~30未満


強い雨

どしゃ降り

傘をさしていてもぬれる

寝ている人の半数くらいが雨に気がつく

ワイパーを速くしても見づらい

側溝や下水、小さな川があふれ、小規模のがけ崩れが始まる

30以上~50未満

激しい雨

バケツをひっくり返したように降る

道路が川のようになる

高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)

・山崩れ、がけ崩れが起きやすくなり、危険地帯では避難の準備が必要
・都市では下水管から雨水があふれる

50以上~80未満

非常に激しい雨


滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)

傘は全く役に立たなくなる

水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる

車の運転は危険

・都市部では地下水や地下街に雨水が込む場合がある
・土石流が起こりやすい
・多くの災害が発生する

80以上~

猛烈な雨

息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる

雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要

雨量で5段階に分けられる

具体的には、1時間雨量で

  • 10mm以上~20mm未満:やや強い雨
  • 20mm以上~30mm未満:強い雨
  • 30mm以上~50mm未満:激しい雨
  • 50mm以上~80mm未満:非常に激しい雨
  • 80mm以上:猛烈な雨

のように、雨の強さを予報用語とともに5段階に分類しています。

バケツをひっくり返したような雨

このうち、『バケツをひっくり返したように降る雨』は、予報用語に見合う「人の受けるイメージ」を5段階に分けた表現のうち、3番目の1時間雨量「30mm以上~50mm未満」、予報用語「激しい雨」に該当します。

また、『バケツをひっくり返したような雨』のほかにも、気象庁では雨の降り方の表現について、場面や状況ごとに以下のような目安を定めています。

  • 「傘をさしていてもぬれる」(人への影響)
  • 「寝ている人の半数くらいが雨に気がつく」(屋内(木造住宅を想定))
  • 「道路が川のようになる」(屋外の様子)
  • 「高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)」(車に乗っていて)
  • 「山崩れ、がけ崩れが起きやすくなり、危険地帯では避難の準備が必要」「都市では下水管から雨水があふれる」(災害発生時)

猛烈な雨

ちなみに、先述した「集中豪雨」や、発達した積乱雲が列をなし、ほぼ同じ場所を通過もしくは停滞することで大雨をもたらす「線状降水帯」などによって、1時間80mm以上の「猛烈な雨」が降った場合では、人の受けるイメージとしては「息苦しくなる様な圧迫感、恐怖を感ずる」と表現されます。

また、そのほかにも「猛烈な雨」の目安としては、

・「傘は全く役に立たなくなる」(人への影響)
・「水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる」(屋外の様子)
・「車の運転は危険」(車に乗っていて)
・「雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要」(災害発生時)

といった極めて危機的な状況が生じると想定しています。

早めの避難の心がけを

大雨による災害は、1時間80mm以上の「猛烈な雨」が局地的に短い時間で一気に激しく降ることで発生する可能性が高まるのは言うまでもありませんが、1時間10mm以上~20mm未満の「やや強い雨」が長い時間降り続くことで発生する場合もあるため、注意が必要です。

『バケツをひっくり返したような雨』は、雨の強さとしては5段階中3番目ですが、それでも道路が冠水して川のようになれば、外へ出ること自体が危なくなりますし、下水管から雨水があふれた場合は、堤防内の土地や建物、道路などが水浸しになる「内水氾濫」につながるおそれもあるため、非常に危険です。

高速道路を走行時にブレーキがきかなくなれば、重大な交通事故につながるおそれもあります。

つまり、気象情報を確認する際は、雨の強さや降り方だけでなく、雨が降る時間の長さや予想される総降水量などにも注目することが大事になります。

日ごろから気象庁が発表する大雨に関する警報や注意報、土砂災害警戒情報などの防災気象情報に注意を払い、雨の強さや降り方に関わらず、早めの避難を心がけてください。

例えば、自分が暮らしている地域のハザードマップや指定避難所などを確認し、警報が発表されたら、すぐに避難に向けた準備をするなどの行動基準をあらかじめ決めておいて、いざという時に迅速な対応ができるように心と体の準備をしておくことも大切です。

避難は避難所に行くことではなく、安全な場所で難を避けることです。

自宅やオフィスがハザードマップ等で比較的安全な場所であったり、想定浸水深によっては建物の2階以上に留まれば過ごせる場合もあります。周囲の状況や家族構成なども判断材料としてご検討ください。

備えあれば憂いなし

先述した2024年5月27日(月)~29日(水)の前線と台風の間接的な影響による大雨に関して、実は裏話があります。

元々、気象庁はこれまで地方単位で発表していた線状降水帯発生の半日前予測の情報を、今年2024年から府県単位で発表することを決め、5月28日(火)9時に運用開始を予定していました。

ただ、当時の気象状況が、線状降水帯の発生が11回発表され、東海地方を中心に大雨となった昨年2023年の台風2号の際と似ていたため、急遽一日前倒しの5月27日(月)での運用開始となり、実際に九州・四国・東海地方の計7県に対して予測情報が発表されました。

結果的に線状降水帯は発生しませんでしたが、今回大きな災害につながらなかったからと言って、次は大丈夫という保証はありません。

もしもの時への備えは、決して慢心にならず、慎重すぎるくらいがちょうど良いと考えておきましょう。

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<参考資料>
リーフレット「雨と風(雨と風の階級表)」〔気象庁〕
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/amekaze/amekaze_ura.png

防災一口メモ 雨の強さと降り方〔気象庁〕
https://www.data.jma.go.jp/miyako/topix/memo/hitomemo202304.pdf

線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけの新たな運用の開始日変更について~5月27日より運用を開始します~〔気象庁〕
https://www.jma.go.jp/jma/press/2405/27a/20230527_senjoukousuitai_kaizenbi_henkou.html

東京都(2023)『東京防災 改訂版2023』

編集:株式会社レスキューナウ
編集:株式会社レスキューナウ
2000年設立の危機管理専門企業。1995年の阪神・淡路大震災を原点に、「最新の情報技術を駆使して、危機に対する迅速な救援と復旧、復興と予防に貢献する」をミッションに掲げた事業を展開している。自然災害から交通障害まで「予定されていた行動が妨げられること」を“危機”と定義し、法人向けに、危機管理情報を配信する「コンテンツ事業」、災害時の状況把握などを支援するサービスを中心とした「危機管理サービス事業」、防災備蓄品を提案・販売する「防災備蓄品事業」の3つを事業の柱としている。

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