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首都直下地震の被害想定と企業がすべき対策

こんにちは。レスキューナウです。

関東中心に懸念されている首都直下地震。大きな被害が予測される中、貴社での対策検討は順調ですか?

内閣府の首都直下地震対策検討ワーキンググループが発表した首都直下地震の被害想定や企業における対策について解説します。


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この記事の目次[非表示]

  1. 1.「首都直下地震」とは?
  2. 2.地震対策「入居ビルの耐震性チェック」
  3. 3.地震対策「什器備品の転倒落下防止」
  4. 4.自助、共助で被害拡大を防ぐ
  5. 5.オフィスでの火災について
  6. 6.インフラやライフラインの被害
    1. 6.1.電力
    2. 6.2.通信
    3. 6.3.上下水道
    4. 6.4.交通と帰宅困難者
  7. 7.社用車の運用について
  8. 8.最後に


「首都直下地震」とは?

「首都直下地震」とは、首都及びその周辺地域の直下で発生するマグニチュード7クラスの地震及び相模トラフ(相模湾から房総半島南東沖までの海底の溝)沿い等で発生するマグニチュード8クラスの海溝型地震のことです。

内閣府の中央防災会議によると、30年以内に70%の確率で起きるとされるマグニチュード7クラスの首都直下地震が都心南部直下で発生した場合には、最悪の場合、死者が約2万3,000人、経済被害が約95兆円と途方もない被害になるとの想定が発表されています。

  特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)‐内閣府防災情報のページ : 防災情報のページ - 内閣府 https://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h25/74/special_01.html


しかし、個人や企業などの取り組みでこの被害想定は大きく減らせる可能性があるともされています。どのような対策ができるか解説します。


地震対策「入居ビルの耐震性チェック」

まずは普段働いている入居オフィスが現行の耐震基準を満たしているか確認しましょう。

耐震基準とは、1950年(昭和25年)に施行された建築基準法施行令に規定されたもので構造物が最低限度の耐震能力を持っていることを保証し、建築を許可する基準のことです。

1981年(昭和56年)と2000年(平成12年)に改正されており、特に1981年の改正から「新耐震基準」となりました。

1995年に起きた阪神大震災では、耐震基準の新旧により建物の被害状況に差が出ました。

新耐震基準の建物は小破または被害なし約70%、大破はわずかでした。

旧耐震設計の建物は大破約30%、中破・小破が約40%と明らかに差が出ています。

中破以上では中にいる従業員様への被害も大きくなる可能性があり、仮に全ての建物が新耐震基準だった場合、人的被害はさらに減らせた可能性があります。


少なくとも、自社が入居するビルは新耐震基準施行以降のビルか、古くても耐震補強を完了して新耐震基準に合致した建物とすることをお勧めします。

新耐震基準ビルを探す場合、ひとつの目安として竣工年月日が参考になります。

新耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日に建築確認を受けた建物が該当します。竣工日ではありませんのでご注意ください。


通常、建築確認を受けてから竣工するまで1年以上はかかると言われていますので、1983年(昭和58年)以降に竣工した建物を探すとよいでしょう。

詳細は不動産会社様等にご確認ください。


地震対策「什器備品の転倒落下防止」

入居オフィスが現行の耐震性能を満たしている場合、次はフロア内の什器備品等が落下や転倒しないか確認しましょう。

特に入居しているフロアが高層ビルの場合、長周期地震動の影響が大きくなる可能性があります。
 
気象庁によると、大きな地震で生じる、周期(揺れが1往復するのにかかる時間)が長い大きな揺れのことを長周期地震動としています。

長周期地震動により、高層ビルは大きく長時間揺れ続けることがあります。また、長周期地震動は遠くまで伝わりやすい性質があり、 地震が発生した場所から数百kmはなれたところでも大きく長く揺れることがあります。

長周期地震動による大きな揺れにより、家具類が倒れたり落ちたりする危険に加え、大きく移動したりする危険があります。

現在は、震度とは別に高層ビルを対象とした長周期地震動階級(1~4)が気象庁HPで発表されます。

揺れによっては、備品は固定していても、中のファイルやモノが飛び出してくる場合があります。できるだけペーパーレス化することは転倒落下防止に有効と思われます。車輪が付いたコピー機のような備品も転がらないように固定しましょう。

オフィス内の日常的な清掃や片付け、不用品廃棄がされていると発災時に有利です。揺れで散逸するものが少なくなり、避難経路確保や帰宅困難時の待機場所設営の労力を減らせる可能性が高くなります。

この対策で、転倒落下や逃げ遅れによる死傷者低減が期待できます。


自助、共助で被害拡大を防ぐ

必要な対策を取っても、大地震は様々な被害を引き起こします。被害をゼロにすることは困難を極めます。

残念ながら救助を必要とする人が出てしまうことは避けられない可能性があります。

首都直下地震では要救助者(助けを必要とする人)が72,000人発生すると言われています。


その場合、自助共助の考え方が重要です。

いち早く自らを助け、共に助け合うことで被害拡大を防げる可能性が高くなります。

公助は大変頼りになりますが、広域で同時多発的に生じた被害に対しては数が足りないと言われています。

例えば、2021年度時点で東京消防庁には救急隊が271隊あり、約744000件の救急通報に対応しています。およそ42秒に1回の出動です。

新型コロナウイルスの流行で増加したともいわれていますが、22年では87万回とさらに増加しています。

平時でこの数字ですから、消防隊や救急隊は災害時に押し寄せる通報に対してトリアージを実施すると言われています。

子供が多くいる学校や保育施設、高齢者施設といった災害弱者を優先的に対応することは容易に想像でき、例えけが人がいたとしても、働き盛りの方が多いオフィスに来られるかはなんとも言えないでしょう。


オフィスでの火災について

基本的にオフィスビルは耐火構造となっており、場所によっては「地区内残留地区」といって火災時にも延焼危険が少ないため、ビルに留まっても問題無いとされている場所も都内に存在します。

内装も基本的に防炎素材で作られており大火災は発生しにくく、もし火災が生じても適切に消防設備が稼働すれば、防火区画で延焼を防げるよう考慮されています。

リスクとして、什器備品の落下転倒時に電気機器本体やコードの破損によるショート、モバイルバッテリー破損による発火などが火元となる可能性があります。

ビルには規模によりスプリンクラーや消火器消火栓、防火扉、シャッターや排煙口などが備えられていますので、普段から使い方を確認しましょう。

別のリスクとして、スプリンクラー破損があります。揺れで天井裏の配管が破損して大量の水が降ってくることで水損が生じた事例があります。

必要に応じて止めるための担当者や手順を確認しておきましょう。


インフラやライフラインの被害

都心部のインフラやライフラインは、地震による被害の影響を大きく受けることが予想されます。

電力

電力供給施設や電柱電線等の損傷により、多くの地域で停電する可能性があります。

発災直後は約5割の地域で停電が発生する可能性があり、1週間以上は不安定な状況が続くとされています。

企業における事業活動にも大きな影響が出ると予想されていますが、自社で停電対策を検討する際のポイントとして、災害時にどれだけ急いで復旧する必要があるかを検討することをお勧めします。

もし社会インフラや供給責任が重い場合は相当の投資をして発電機や蓄電池を備えなくてはならないかもしれません。

逆に、状況が落ち着いてからの事業再開で問題無いと判断した場合は、無理に費用を掛けずに復旧を待つというのも選択肢のひとつです。


ひとまず地震の応急対応が落ち着いて社内待機をするとなった際に、「電気が止まったこのオフィスはどうなるのか?」と想像したことはありますか?


電気が止まるとオフィスの換気や冷暖房が基本的には停止します。

昨今の酷暑で冷房が止まったオフィスはサウナ状態になる懸念もあります。

オフィスに窓が無い場合は換気もできないので感染症リスクと暑さ、湿度で過酷な環境になる可能性があります。

涼みに地上の公園などに行っても、すでに人が大勢いるかもしれません。

夜になって戻りたくても入居フロアの階によっては階段を上がるのは疲れと暑さで難しいかもしれません。

停電時は業務以外にも社内待機をイメージして備えが必要です。ポータブル蓄電池と扇風機で多少なりとも涼むなど、できる範囲で対策をご検討ください。

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通信

通信設備の損傷や通信トラフィックの増加により、携帯電話やインターネットの通信が困難となる可能性があります。

これにより、災害情報の伝達や避難指示などの情報が届かないリスクが高まります。

固定電話・携帯電話ともに9割の通話規制が敷かれ、それが1日以上継続される想定です。

東日本大震災時はSNSが繋がりやすいと言われましたが、今日の利用者増を考えると従来の評価通りになるかは分かりません。

事業継続のうえで通信は必要ですが、複数のオンライン会議ツールや通信手段を備えることでリスク分散をする費用を掛けた対応をするか、難しい場合は通信復旧まで辛抱をする、といった時間で解決する方法も選択肢のひとつです。

インターネットの発展で影が薄くなりましたが、ラジオは世の中(社外)の情報収集ツールとしていまでも非常に有効です。

乾電池を入れれば聞くことができ、スピーカー付であればフロア内の複数の人向けに情報発信ができます。

AMとFMがありますが、オフィスビルが林立する立地ではAMが電波特性上聞こえやすいので、あらかじめラジオに信頼できるメディアの周波数をメモして貼付するなどしておきましょう。

防災目的のほか、事業継続目的で衛星携帯電話等を保有している企業もいらっしゃると思います。使い方が通常の携帯電話と異なる場合があるので、定期的な訓練で習熟しておきましょう。

電波の指向性があるため、気象条件や周囲の構造物、アンテナ指向方向等により通話品質に影響します。


ほかには衛星インターネット回線の導入を検討される企業も出てきています。

いずれも自社の災害時における事業継続の目標や維持管理費用などを検討して持続しやすい体制を整えましょう。

事業継続面で問題が無ければ、無理に機材を導入せず公共インフラの復旧を待つのも現実的な手段の一つと考えます。

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上下水道

上下水道設備の損傷で、給水・排水が停止する可能性があり衛生環境の悪化や生活の困難が生じてきます。

都区部では約5割が断水になる想定で、約1割は下水道も使用できなくなる想定です。

これはあくまで公共インフラの想定であり、オフィスビル等による個別建物の被害までは想定されていません。

インフラは無事でも、ビルが停電したり配管等が損傷することで入居物件で水道利用ができなくなる場合もあります。

水と簡易トイレの備蓄はこうした事態に有効です。


反面、ビル固有の防災設計により災害時でも使用できる水源が屋上などに設置されている場合や敷地内にマンホールトイレが設置される場合もあります。

どこまで入居ビルの備えに期待し、どこから自社で備えるかをよく管理会社様と確認のうえ自社でご検討ください。


交通と帰宅困難者

東京都では「自助」、「共助」、「公助」の考え方に基づき、帰宅困難者対策を総合的に推進する条例を制定しています。

首都直下地震が発生している中で多くの人が帰宅しようとすると、帰宅する人が余震や将棋倒し等の二次被害の危険にさらされることがあります。

さらに発災後72時間で下敷きになった方などの生存率が急激に下がるボーダーラインとなるため、その間に公的機関が救助に全力を注げるよう配慮する目的もあります。


そこで、一斉帰宅抑制の推進や、安否確認の周知、一時滞在施設の確保、帰宅支援といった内容が盛り込まれた東京都帰宅困難者対策条例が作られました。

帰宅困難者対策ハンドブック各事業所での帰宅困難者対策を進める上で参考となるよう作成しました。

  帰宅困難者対策ハンドブック 各事業所での帰宅困難者対策を進める上で参考となるよう作成しました。 東京都防災ホームページ


ご家族の安否やご家庭内での役割のためすぐに帰宅したい方もいらっしゃると思いますが、自他ともにリスクが生じますので帰宅困難となった場合の家庭内での取り決めや事前の練習、連絡方法や連絡できない場合の心構えなどをご家族で話し合っておきましょう。

企業のご担当者様からは、それでも緊急を要する理由で帰宅したいと申し出た従業員様の対応をどうすればよいか悩まれることもあろうかと思います。

帰宅困難者抑制に反したことでの罰則等は無く、無理な引き留めも難しいかと思います。

帰宅希望者の安全と企業としての各種リスク軽減のため、帰宅希望者に対して十分な帰宅計画立案と帰宅ルートの情報収集、必要な物品の携行を助言することは有効と考えますが、万が一に備えて帰宅希望者に自己責任で帰宅する旨を書面で提出していただくケースもあるようです。


鉄道各社とも、概ね震度4で鉄道は一旦停止し5弱以上の揺れでは安全確認が完了するまで運転見合わせとするようです。

鉄道会社や路線により見合わせ時間は異なりますので駅前に滞留せず、社内や一時滞在施設等の安全な場所で運転再開を待つことをお勧めします。

鉄道は国の耐震基準を満たした設計で建設されていますが、鉄道各社でさらなる耐震補強工事が続いており、致命的な被害が生じる可能性は低くなってきていると考えます。


社用車の運用について

日常的に社用車を運用している企業では、発災時の車両取り扱いについて十分な検討を訓練をしておきましょう。

避難等でやむを得ない場合には、できるだけ交通の支障とならない場所に停車してエンジンキーを差したまま(見えやすい場所に置いたまま)、窓を閉めてドアロックはしないで移動します。

大事なことは、乗車している従業員様が車両放棄をためらって避難が遅れないよう、免責となることを明確化して従業員様がすみやかに避難できるようにしておくことです。

避難時は他の車両が走行している場合があります。道路や状況により発炎筒、非常停止板等を展開して多重事故防止に努めましょう。


燃料面では、地震による油槽所・製油所の運転停止やタンクローリーの不足、深刻な交通渋滞などにより、非常用発電用の重油を含め、軽油、ガソリンなどの一般への供給が困難となると想定されます。

社用車の運用上、残燃料が6割くらいになったら給油しておく習慣をつくっておくといざというときに安心ですね。

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最後に

首都直下地震のように大規模な地震のみならず、中小の地震でも企業に一定程度の影響が生じる場合があります。ほかにも大雨も近年増加し、災害リスクが高まっていることは皆様も肌身に感じていらっしゃると思います。

そのリスクを踏まえた上で、国や自治体、企業、そして市民一人一人が、予防と対策に取り組むことが、大きな被害を回避し、安全な生活を守るカギとなるでしょう。

‟防災力” は ‟想像力” です。

「こうなるかもしれない」「これが起こったら大変だ」と想像力を巡らせて、事前に対策しておくことが防災や初動対応、事業継続につながっていきます。


危機管理専門企業のレスキューナウでは、防災、BCP対策の気軽な相談から承っています。

セカンドオピニオンを聞きたい、また専門家の意見を聞きたい等ございましたらお気軽に相談窓口にて質問なさってください。

  防災・BCP課題相談窓口 貴社の課題感をお伺いし、最適なサービス・事例などをご案内します。課題解決に繋がる情報をお探しのお客様は、お気軽にご相談ください。 株式会社レスキューナウ




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