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企業で実際に使える危機管理マニュアル「プロトコル」の作り方

こんにちは。レスキューナウです。

昨今の企業経営において、危機管理はもはや選択肢ではなく、事業継続のための必須要件となっています。企業を取り巻くリスクは自然災害だけではなく、システム障害、情報漏洩、不祥事、パンデミックと多様化かつ甚大化しており、BCPや危機管理マニュアルの策定は企業にとって必須といっても過言ではありません。

一方で、弊社へご相談されるお客様の中には、BCPや危機管理マニュアルを策定し、安否確認をはじめとしたツールを導入しているにも関わらず、「いざという時に本当に機能するのだろうか」というご相談をいただきます。

その際に、私たちからご提案させていただいているのが、「プロトコル」という形の実践的な危機管理マニュアルの策定です。

この記事では、これまで多くの企業様の危機対応能力向上をご支援してきた私たちレスキューナウでも日々活用している、「プロトコル」の重要性や作り方を分かりやすくご紹介します。

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この記事の目次[非表示]

  1. 1.なぜ「危機管理マニュアル」は必要なのか?
  2. 2.危機管理マニュアルが機能するか不安になる必然
  3. 3.レスキューナウが推奨する「プロトコル」とは?
  4. 4.「プロトコル」に基づいた実践的な危機管理マニュアルの作り方
    1. 4.1.STEP1:マニュアル作成の目的と基本方針を明確にする
    2. 4.2.STEP2:自社を取り巻くリスクを洗い出し、シミュレーションを行う
    3. 4.3.STEP3:初動対応「プロトコル」を策定する(誰が、いつまでに、何を、どのように)
    4. 4.4.STEP4:実践に必要なツールと備蓄品を整備する
    5. 4.5.STEP5:繰り返し訓練し、マニュアルを「生きたもの」にする
  5. 5.貴社に最適な危機管理体制を築くために

なぜ「危機管理マニュアル」は必要なのか?

「実際に使える」危機管理マニュアルがなぜ必要なのか。それは、そもそもなぜマニュアルが必要なのかを考えるとわかります。

企業に危機管理マニュアルが必要な理由をシンプルに言えば、予期せぬ「万が一」の事態が発生した際に、従業員の安全を確実に守り抜き、事業への致命的な打撃を回避し、そして社会からの大切な信頼を失わないためです。

危機を迎えた状況を想像してみるとどうでしょうか。いわば「異常事態」といえる状態では、人は混乱し、普段通りの判断力や記憶力を維持することは困難といえます。

だからこそ、組織全体が混乱の中でも迅速かつ的確に行動するための、いわば「共通言語」として、 「危機管理マニュアル」は必須なのです。

▼ 日ごろのリスク管理も重要です。「リスク管理」と「危機管理」の違いを知り、正しく対応策をつくっていきましょう

危機管理マニュアルが機能するか不安になる必然

危機管理マニュアルの必要性と使用シーンを想像するとわかる通り、マニュアルをいざ使う時は、極度の緊張、深刻な混乱、そして不確かな情報が渦巻いています。その一方で、時間的制約の中での判断と行動も同時に求められる状況でもあります。

このような異常状態で発生するストレス下におかれた人は、先述した判断力や記憶力だけではなく、複雑な情報を処理する能力も低下し、シンプルで直感的な指示を求める傾向があります。

さて、貴社のマニュアルはこのような状況下で速やかに参照し、実行できるものになっているでしょうか。

もし、マニュアルが分厚く複雑な場合、異常事態下で機能させることはまず難しいといってよいでしょう。その理由は、情報が多すぎるからです。

確かに、分厚いBCPや危機管理マニュアルは緊急時の対応を想定した「知識の貯蔵庫」といえます。こちらは、平時からの危機管理体制整備や担当者引き継ぎ、属人化防止にあたっては重要な資料であるといえます。一方で、情報が詰め込まれたマニュアルだけでは 「参照されるべき時」の状況に対して十分備えができていないといえます。

では、改めて貴社のマニュアルは危機という異常事態下で使いこなすことができ、確実に社員が対応できるものになっているといえるか考えてみてください。もし、異常事態下で使いこなせるマニュアルがないのであれば、十分な危機管理対応ができているとは言えません。場合によっては分厚いマニュアルだけに頼ることで、参照に時間がかかり、迅速な対応の足を引っ張る可能性すらあります。

このように、危機管理マニュアルが機能するか不安になるのは、ある程度必然といえるのです。

では、危機の際に使いこなせる「実践的」な危機管理マニュアルとは、どうあるべきでしょうか。これは分厚いマニュアルとは逆のものといえます。

つまり、いざという時に担当者が見て、瞬時に理解し、すぐに行動に移せるような「実践的」かつ「シンプル」なものです。そこでレスキューナウが推奨しているのが「プロトコル」の形で作成する危機管理マニュアルです。

レスキューナウが推奨する「プロトコル」とは?

レスキューナウが推奨する「プロトコル」とは災害発生時に一刻を争う状況下で、誰でも迷わず行動できるよう、目標時間を定めてアクションを一覧化した「初動対応手順書」です。

これにより、「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」行動すべきかが一目で分かり、経験の乏しい新担当者でも簡単に対応でき、災害対応業務の標準化に繋がります。そして、従来の危機管理マニュアルの課題を克服し、実践的な初動対応を実現します。


従来の危機管理マニュアル(BCPを含む)
レスキューナウ推奨の「プロトコル」
主な目的
あらゆるリスクの網羅と詳細な対応策の記述
危機発生直後の初動対応の迅速化と標準化
特徴
・網羅的で分厚い文書になりがち ・詳細な情報が多いため、緊急時に参照しにくい ・策定に時間と労力がかかる
・「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」を明確化 ・目標時間軸(2時間、6時間、2日など)を設定し、行動を具体化 ・簡潔で実践的、一目で理解しやすい
課題
・緊急時に読まれない、機能しない ・情報が錯綜し、対応が遅れる ・属人化しやすい
初動対応に特化するため、その後の復旧フェーズは別途計画が必要(BCPとの連携で補完)
効果
・体系的なリスク理解
・大規模災害時の全体把握

・初動対応の迅速化と標準化 ・経験の少ない担当者でも対応可能 ・情報フローの効率化(CMT


重視する点


・網羅性 ・詳細性
・実効性 ・即応性

また、プロトコルが従来の危機管理マニュアルと決定的に違う点は、単なる文書ではないことです。「情報の流れ」に着目しつつ、緊急時の行動を標準化することで、時間軸を意識した迅速な対応を可能にします。

実際にレスキューナウでは、危機管理情報センターで緊急体制時の対応フローにプロトコルを活用しており、迅速かつ確実な危機管理情報の提供を実現しています。

▼ レスキューナウの危機管理情報配信を支える「危機管理情報センター」についてはこちら

「プロトコル」に基づいた実践的な危機管理マニュアルの作り方

では、簡単かつ実践的な危機管理マニュアルである「プロトコル」はどのように作ればよいのでしょうか。作り方を具体的なステップで紹介します。

STEP1:マニュアル作成の目的と基本方針を明確にする

マニュアル作成の目的(例:社員の安全確保、二次被害の防止、被害の最小化)と、危機発生時の原則となる基本方針(例:本マニュアルに基づく実行、法令遵守、社員の安全最優先)を明確にすることが重要です。

これらが定まっていないと、マニュアルが社内に浸透しにくく、形骸化する恐れがあります。

STEP2:自社を取り巻くリスクを洗い出し、シミュレーションを行う

他社の事例や自社の過去事例をもとに、顕在化が予想されるリスクを洗い出します 。あらゆるリスクに対応するのではなく、まずは代表的なリスク(例:地震、水害、感染症など)を一つピックアップし、そのリスクが顕在化した際の具体的な被害シナリオを想定します。

想定したシナリオに基づき、机上訓練や実地訓練を通じてシミュレーションを行うことが極めて重要です。

シミュレーションを行うことで、机上では見えなかった「情報のボトルネック」「意思決定の遅延」「必要な備品の不足」といった具体的な課題が浮き彫りになります。これらの課題は、マニュアルの「穴」を特定し、より実践的な手順を策定するための貴重な情報です。

シミュレーションは、危機管理マニュアルの「現実適合性」を高めるだけでなく、従業員の「当事者意識」と「危機対応能力」を向上させる効果もあります。

STEP3:初動対応「プロトコル」を策定する(誰が、いつまでに、何を、どのように)

シミュレーションで洗い出した課題と必要なアクションに基づき、具体的な初動対応プロトコルを策定します。

「危機発生直後の行動」「現状把握のために確認すべき項目」「対策本部の運営要領、各役職者と責任権限、設置場所と必要備品」「情報管理・社内通達・エスカレーションの方法」などを盛り込むと、行動が明確になります 。

特に「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」行動すべきかを明確にし、時間軸(例:地震発生直後から2時間、6時間、2日など)で手順を定めることが、緊急時の迅速な対応を可能にします。やるべきことはたくさんありますので、アクションベースで手順にしていくことが大切です。

そして以下のようなプロトコルができあがってくると思います。​​​​​​​

No
目標時間

アクション


方法


担当
1
0分
身の安全確保・周囲の確認
机の下に入る、あたまを覆う、危険な場所から離れる等
各自

2


3分
CMT立上げの判断
CMTを立ち上げるか判断、立ち上げない場合その事を連絡、No10の連絡を行って終了 参集基準:×××(〇県×市)で震度××以上の場合 
CMT リーダー、サブリーダー
3
15分
トップへ被害報告第一報(トップ報告①)
発生した地震の概要、①立ち上げる場合 CMT立上げの第一報を報告する(被害はまだつかめない) ②立ち上げない場合 立ち上げないことを報告する ・報告完了をチャットで共有
CMT リーダー
...
...
...
...
...
...
...
...
...
...

レスキューナウが提供する地震版、水害版、感染症対応モデルなどの多様なプロトコルテンプレートは、ゼロから作成する手間を省き、効率的な策定を支援しています。

これらのテンプレートは、企業で作成する際に業界の特性やニーズに応じてカスタマイズして活用できます。

▼ テンプレートについて、詳しくはこちらをご覧ください

STEP4:実践に必要なツールと備蓄品を整備する

プロトコルを策定するだけではなく、いざという時にプロトコルを実践できるようにすることも大切です。そこで、まずは必要なツール(安否確認システム、情報集約フォーマットなど)を整備します。

まずは、STEP2のシミュレーションで明らかになった不足品やツール、従業員の安全確保、業務継続に必要な備蓄品(水、食料、防災用品など)を計画的に購入・備蓄します。

ツールと備蓄品の整備は、プロトコルを「実行可能」にするための物理的・技術的基盤であり、これらがなければどんなに優れたプロトコルも絵に描いた餅となります。

また。シミュレーションによって「何が不足しているか」が具体的に洗い出されるため、無駄なく必要なものを揃えることができます。

▼ レスキューナウでは防災備蓄も取り扱っています

STEP5:繰り返し訓練し、マニュアルを「生きたもの」にする

策定したプロトコルは、一度作って終わりではありません。定期的に内容を見直し、繰り返し訓練を実施することが極めて重要です。

役員、危機管理対策要員、一般従業員、パート社員など、対象者に応じた訓練(シミュレーション訓練、実地訓練、研修会)を計画的に実施します。

訓練を通じて、プロトコルが実際に機能するかを検証し、課題を抽出し、内容を改善していくことで、マニュアルは内容が濃く実践的なものになり、いざというときに役に立つ実践的なものになるでしょう。

プロトコルの形であっても、マニュアルはあくまで「計画」であり、実際に危機が発生した際に、人がその計画通りに動けるかは別の問題です。

訓練は、計画と実行のギャップを埋める役割を果たします。繰り返し訓練することで、従業員は緊急時のストレス下でも冷静に、そして反射的にプロトコルに沿った行動が取れるようになります。訓練を続け、プロトコルのブラッシュアップを行うことで、更に完成度を上げていきます。

▼ 危機管理マニュアルだけでなく、訓練も実践的にしませんか

▼ プロトコルに基づいた企業向け防災訓練の例をご紹介しています

貴社に最適な危機管理体制を築くために

現代の企業にとって、危機管理マニュアルはもはや「あれば良い」ものではなく、「なければならない」ものとなっています。しかしながら、網羅的にしようとしていざという時に機能しないマニュアルになってしまっては本末転倒です。

そこで、今回は「プロトコル」の形で危機管理マニュアルを作成する方法と重要性についてお伝えしました。

今回ご紹介した「プロトコル」が、従来の分厚いマニュアルが抱える課題を克服し、緊急時に真に役立つ「簡単」かつ「実践的」な危機管理体制の構築に貢献できますと幸いです。

また、危機管理マニュアル作成時に不安がある、ツールの相談をしたいという方は、お気軽にレスキューナウにご相談ください。経験豊富なスタッフが貴社のお悩みに真摯に寄り添い、最適な提案をさせていただきます。

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編集:株式会社レスキューナウ
編集:株式会社レスキューナウ
2000年設立の危機管理専門企業。1995年の阪神・淡路大震災を原点に、「最新の情報技術を駆使して、危機に対する迅速な救援と復旧、復興と予防に貢献する」をミッションに掲げた事業を展開している。自然災害から交通障害まで「予定されていた行動が妨げられること」を“危機”と定義し、法人向けに、危機管理情報を配信する「コンテンツ事業」、災害時の状況把握などを支援するサービスを中心とした「危機管理サービス事業」、防災備蓄品を提案・販売する「防災備蓄品事業」の3つを事業の柱としている。

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