
2025年10月 八丈島を襲った台風、その時の状況は?
こんにちは、レスキューナウです。
2025年10月は、鉄道の重大事故と台風による大規模な自然災害が目立った月でした。
本記事では、弊社が収集した情報を交えて、10月に発生した2つの災害を振り返ります。「あのとき、自社はどのように対応しただろうか」「事前の備えは十分だったか」など防災・減災やBCPについてを考えるきっかけや、企業防災や災害対応の参考にしていただければ幸いです。
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【2025年10月5日】東急田園都市線で信号システム設定不備による脱線事故発生
10月5日23時04分頃、東急田園都市線梶が谷駅構内で、回送列車に上り列車が衝突する事故が発生しました。この事故で回送列車の最後部車両1両が脱線し、乗務していた車掌1人が負傷しました。
事故の原因は、連動装置と呼ばれる信号システムの設定不備でした。本来衝突の危険性のある位置に列車がいる場合は赤信号になるところ、進行を許可する信号が表示される設定になっていました。
事故処理や調査のため、東急田園都市線は翌6日深夜にかけて利用者の多い東京23区の区間を含む一部区間で24時間以上にわたり運転を見合わせました。最終的に同線に乗り入れる東急大井町線とあわせて計1,107本が運休、約65万2,000人に影響が出ました。
レスキューWeb MAPで運転を見合わせた6日朝の道路状況を見ると、東急田園都市線沿線で平時に比べて多くの道路で激しい渋滞が発生していたことがわかります。
また、隣接する東急東横線では東急田園都市線から迂回して通勤する旅客で激しい混雑が発生し、運行が乱れたほか、周辺の各線にも列車遅れなどの影響が生じました。
2025年10月6日9時頃の鉄道運行情報および道路の状況
中央にあるオレンジの太い線が東急田園都市線で、周辺道路が激しく混雑している様子がわかる
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【2025年10月上旬・中旬】伊豆諸島南部に台風が相次いで接近、八丈島で大雨・暴風被害が発生
10月8日から9日にかけて、台風22号が伊豆諸島南部に最接近しました。中心気圧940hPa、最大風速50m/sという非常に強い勢力で、気象庁は東京都の伊豆諸島に対して初めて台風を要因とする暴風・波浪特別警報を発表し、八丈島では最大瞬間風速54.7m/sを観測しました。
また、暴風だけではなく大雨の被害も大きなものでした。台風の外側にあたる雲がかかった八丈島では、線状降水帯の発生により1時間に92mmの猛烈な雨、総雨量は430mmを超える大雨を観測しました。
レスキューWeb MAP で台風通過時の様子を見ると、台風の中心から外側の雨雲が長時間にわたって八丈島にかかっていたことがわかります。
2025年10月8日20時から翌9日12時までの八丈島(中央上)、青ヶ島(中央下)周辺の雨雲の動き
八丈島に9日朝に強い雨雲がかかっていたことがわかる
この一連の大雨・強風の影響で八丈島と青ヶ島を中心に建物被害が多数発生し、八丈島では最大約7,000軒で停電、最大約4,100軒で断水が発生しました。
そして追い打ちをかけるように、台風23号が10月13日に伊豆諸島南部に接近しました。八丈島空港では最大瞬間風速42.7m/sを観測し、青ヶ島村では総雨量が200mmを超えるなど、立て続けの台風により被害が拡大しました。
この2つの台風接近の後、停電は10月末、断水は11月下旬に復旧しました。しかしながら、住家被害は900件以上(2025年11月21日現在)、農林水産関係被害は17億円以上と甚大で、東京都は7町村に災害救助法を適用し、復旧に向けた支援を行っています。
2025年10月の災害事例から見える企業防災・BCPに役立つ実践ポイント
2025年9月に発生した一連の災害を振り返ると、企業が危機が発生しても事業へのダメージをできるだけ抑えるためのポイントが見えてきます。
災害が連続するケースに対する備え
台風22号と23号のように立て続けに災害が発生するケースでは、一度目の災害対応で疲弊した状態で次の災害に直面します。今回は台風の連続でしたが、2024年の能登半島のように、大地震の半年後に大雨で被害発生というケースもあります。対応にあたる人間の疲弊だけではなく、設備損傷や防災・減災の前提となる設備の損傷といった条件も重なり、リスクが高まります。
こうした状況では、過去の災害における経験や類似する災害のケースは役に立ちません。そのため、命を守る最低限の防災備蓄と、より正確な情報収集・把握が必要になります。
特に企業防災においては、事業へのダメージを抑えるために情報収集は特に欠かせません。そのため、災害が連続する状況下においても、可能な限りスムーズな情報収集ができる手順・方法の策定や、情報がうまく入ってこない場合の事業継続計画(BCP)の策定が重要になってきます。
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交通障害発生時の迅速な対応
事業へのダメージを軽減すべき対象は、台風や大地震のような大規模自然災害に限りません。
東急田園都市線の事故では、24時間以上の運転見合わせにより65万人以上に影響が出ました。多くの人の通勤に影響が出たことは想像に難くなく、このような“人の移動に支障が出る状況”も事業にダメージが出る可能性があります。
また、この事故は深夜に発生し、長時間運転を見合わせたことから、類似の状況では翌朝の通勤時間帯の指示がポイントになります。朝に状況を把握したとしても、時差出勤の指示や在宅勤務の指示を素早く出せるか、またテレワーク環境の整備など、ダメージをできるだけ抑える柔軟な勤務ができる基盤ができているかも大切です。そして、柔軟な勤務指示により、従業員のエンゲージメントも高めることもできます。
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危機発生時の情報の一元管理と共有
「危機」の発生時には、支店や事業所の状況確認、従業員への指示、対応タスクの割り振りなど、複数の業務が同時並行で進みます。情報が分散し、誰が何をしているのか把握できない状況は混乱を招きます。組織全体が同じ情報を基に行動できる環境を整えることで、対応の抜け漏れを防ぎ、効率的な災害対応が可能になります。
2025年10月の災害は、自然災害から事故まで、企業が直面するリスクの多様性を示しています。災害情報のリアルタイム把握、拠点の状況可視化、迅速な意思決定と行動につながる体制づくりなど、今回の事例から学べることは多くあります。
自社のリスクや事業形態に合わせて、様々な危機に対して実効性の高い防災・減災やBCP実行の体制を検討する一助になれば幸いです。
▼ 災害情報を収集する必要性についてご紹介しています












