
東海豪雨から企業の豪雨災害対策を考える
2024年8月下旬に九州に上陸し、各地に大きな被害をもたらした台風10号。
九州南部で猛烈な風を観測すると同時に台風から遠く離れた東海地方で多くの雨を降らせ、東海道新幹線は3日間も一部区間で運転を見合わせました。
そんな中、類似の大雨被害として、約四半世紀前に同じく東海地方で猛威を振るった「東海豪雨」を思い出した方も多いのではないでしょうか。
今回は「東海豪雨」のあらましを振り返ることで、大雨災害とその対策についてお伝えしていきます。
この記事の目次[非表示]
- 1.東海豪雨の概況
- 2.東海豪雨の特徴
- 3.2024年台風10号との類似
- 4.東海豪雨の記録
- 5.東海豪雨発生時の当社の対応
- 6.豪雨災害に対して企業がとるべき対策3選
- 6.1.リスクエリアの特定
- 6.2.BCPおよび初動対応の強化と訓練の実施
- 6.3.自社への影響の確認
- 7.最後に
東海豪雨の概況
のちに「東海豪雨」と呼ばれる大雨が降ったのは2000年9月11日から12日にかけてのこと。
雨は11日未明から降り始め、夜になると急激に強まり、翌12日朝まで降り続きました。
2日間の積算降水量は多い所で600mm近くに達し、名古屋市では11日の日降水量が平年の9月の月降水量の2倍となる428mm、2日間の合計降水量は567mmに達しました。
名古屋市やその周辺の市町村では、堤防の決壊、河川の越水によって、広い範囲で浸水被害が発生し、各地で土砂災害や竜巻による被害も発生しました。
最終的に被害は愛知県内で死傷者7人、全壊住宅18軒、半壊住宅154軒、一部損壊住宅147軒、床上浸水22,078軒、床下浸水39,728軒にものぼりました。
名古屋市西区 新川破堤箇所付近(出典:国土交通省 中部地方整備局 庄内川河川事務局)
東海豪雨の特徴
東海豪雨の大きな特徴は、台風から離れた地域で大雨となったことです。
東海地方で豪雨となった11日の天気図を見ると、非常に強い勢力に発達した台風14号が沖縄本島の南東海上にあります。
2000年9月11日9:00の天気図(出典:災害をもたらした気象事例|気象庁 )
このとき、本州や九州地方では台風本体の雨雲の直接の影響はありませんでした。
しかし、台風の東側を回る暖かく湿った空気が日本付近に停滞していた秋雨前線に向かって流れ込むことで、前線の活動が活発になり、東海地方だけでなく、紀伊半島の南東斜面や四国地方や九州地方の太平洋側で大雨となりました。
中でも名古屋市およびその周辺の東海3県ではいわゆる「線状降水帯」が発生したと考えられており、猛烈な雨を観測したというわけです。
また、台風14号が沖縄本島付近を通過し東シナ海を北上する進路を取ったため、日本付近に湿った暖かい空気が流れ込みやすい状況が長く続いたことも豪雨に影響したと考えられます。
2000年9月8日から9月17日の期間降水量(出典:災害をもたらした気象事例|気象庁)
2024年台風10号との類似
冒頭で述べた通り、今年8月に九州に上陸して各地に大きな被害をもたらした台風10号も、途中までは東海豪雨の原因となった2000年台風14号と同じような経路を進んでいました。
2024年8月27日09:00の天気図(出典:過去の天気図|気象庁)
台風10号は発達しながら奄美地方に接近、日本海には前線が停滞し、この前線に向かって南からの湿った空気が日本付近に流れ込み、関東地方から九州地方の太平洋側を中心に大雨となりました。
三重県北中部では8月31日に線状降水帯も発生し、まさに東海豪雨に近い大気の状況になりました。
幸いにして東海豪雨ほどの降水量を記録することはありませんでしたが、東海地方では降り始めからの雨量が、静岡県伊豆市天城山で977.5mmに達するなど、各地で600から700mmの記録的な大雨となりました。
愛知県では3人が土砂災害に巻き込まれて亡くなるなどの被害も出ています。
東海豪雨の記録
東海豪雨の被害は非常に大きいものでしたが、データを見ることで記録的な大雨だったことも知ることができます。
まず、期間降水量は、三重県宮川村で1090mmとなったほか、四国から東海地方で800から1000mmに達しました。
そして大きな被害が出た名古屋市では、2024年9月上旬現在まで、大雨の観測史上1位の記録はすべてこの東海豪雨で観測されたものとなっており、いずれも2位以下よりも抜きんでています。
要素によっては2位の値の2倍以上の降水量もあり、現在もその記録は破られていません。
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参考:過去の気象データ検索|気象庁
参考までに、気象庁は名古屋市における「50年に一度の大雨の値」を、3時間雨量:179mm・48時間雨量:404mmとしていますが、東海豪雨はいずれもこの値を大きく上回っています。
記録や基準を見ても、東海豪雨が予想をはるかに上回る、経験したことのない大雨であったかが分かります。
つまり、もしも「東海豪雨級の大雨」と例えられた場合、50年に一度あるかないか、今までに経験したことがないような大雨ということになります。
今後、同程度の大雨が予想されることがあれば、大雨による河川の氾濫や浸水に備え、自分の命が助かる可能性が少しでも高い備えや避難行動が求められることになるといえます。
東海豪雨発生時の当社の対応
東海豪雨が発生した2000年は当社創業の年でした(創業時の社名は株式会社レスキューナウ・ドット・ネット)。
当時から独自に情報収集を行い、避難情報の発令状況や鉄道の運転見合わせ・運転再開、被害のまとめなどを提供していました。
現在も当社危機管理情報センターでは、災害や危機に関する情報を24時間365日体制で収集・配信を行っていますが、常に災害と向き合うこの姿勢は、創業当時から受け継がれているDNAのようなものといえます。
2000年当時のレスキューナウ・ドット・ネットのWebページ
豪雨災害に対して企業がとるべき対策3選
企業が東海豪雨のような豪雨災害に備えるためには、従業員の安全確保はもちろん、事業継続への準備や保有資産の保護も視野に入れることが重要です。
ここでは豪雨災害に対して企業がとるべき対策の中でも、特に重要な3つについてご紹介します。
リスクエリアの特定
まずは自社が被害を受けやすい場所にあるかどうか、どのような被害の可能性があるかをハザードマップで事前に確認しておくことが重要です。
災害・危機への対策は事前準備が大半を占めるといっても過言ではなく、どのような現象が発生した際にどのようなリスクが想定されるかを知っておかなければ、対策のしようがありません。
洪水が起きてから、自社近辺の洪水による被害リスクを確認するのでは対応が後手後手に回ってしまいます。
ハザードマップには水害だけでなく地震や火山災害によるリスクも掲載されているため、事前に自社における災害リスクをチェックしておきましょう。
BCPおよび初動対応の強化と訓練の実施
企業にとって災害対策の基盤である事業継続計画(BCP)と初動対応計画の強化をすることによって、予期せぬ業務停止や損害のリスクを軽減できる可能性が高まります。
前項でチェックしたハザードマップをもとに、いつどのような被害が想定され、実害が発生した際には何を優先して、誰が取り組むのかといった具体的なアクションプランまで決めておくことが非常に大切です。
また、事業継続計画(BCP)と初動対応計画は策定するだけでは効力を発揮できません。
実践的な訓練を通して、BCPは本当に機能するのか、実行可能な初動対応手順になっているのかを確かめながら定期的にブラッシュアップし、生きた計画にしていきましょう。
アドバイザリーサービスでは、体制の構築から訓練までをプロのアドバイザーが伴走して支援し、情報収集と課題抽出、トップ報告までの災害対応の流れを最適化します。
BCPを策定したはいいものの本当に実践できるのか不安が残るという方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
自社への影響の確認
実際に豪雨災害が発生すると考えられる、もしくは発生した場合はその影響が自社にも及ぶものかどうかをすぐに確認する必要があります。
影響がありそうな場合は、浸水を食い止める、避難をするといった具体的な行動を起こす準備をしなければなりません。
具体的には気象庁のサイトに掲載される情報と自社拠点の場所を照らし合わせることで、影響度を測ることができます。
【気象庁のサイトに掲載される情報例】
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しかし、ネット上に溢れる災害情報と拠点を1件1件突き合わせるのは非常に骨の折れる作業です。
レスキューWeb MAPは、災害情報と拠点を1枚の地図に集約することで災害対応の効率化とスピードアップの実現をサポートしていますので、そういったツールの導入を検討してみるのもおすすめです。
最後に
レスキューナウが設立された2000年は、東海豪雨を始め、有珠山の噴火や平成12年鳥取県西部地震(M7.3・最大震度6強)など、様々な種類の自然災害が発生した年でした。
その後、治水対策が行われ、気象庁が発表する防災気象情報の種類も増えるなど、自然災害への対策は今現在も進められていますが、それでもなお想定外の状況が発生してしまう可能性はゼロではありません。
しかし、事前の準備や対策によって、被害を大幅に軽減することや事業を早期に復旧させることは可能です。
とはいえ、担当者の数が少なかったり、危機管理業務に割ける時間が多くないと全て対策するのは難しいかもしれません。
レスキューナウではそんな防災担当の方の負担が少しでも減るよう、いくつかのツールをご提供しております。
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危機管理情報センターが集約した情報(電車の運行情報やインフラ情報、各種気象情報など)を24時間365日リアルタイムで配信し、専用のweb画面に集約するサービスです。
自社や取引先に関する情報のみの閲覧やアラートメールの受信設定も可能で、抜け漏れのない情報監視、少人数体制での迅速な災害対応を実現します。
<レスキューWeb MAP>
危機管理情報センターが集約した情報と自社拠点や取引先を1枚の地図に集約・可視化させるサービスです。
災害や危機による影響の有無を色分けされた分かりやすい地図でリアルタイムに一目で把握することができ、災害対応の判断・実行におけるスピードアップをサポートします。
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