
BCP対策とは?策定の目的や運用の手順、企業事例を徹底解説
こんにちは。レスキューナウです。
貴社のBCP対策は万全ですか?昨今の災害の増加やセキュリティの問題の増加は事業継続に大きな影響を及ぼしています。
今回はBCP(事業継続計画)やBCP対策とは何か、その意味や、BCP対策の目的、BCP策定のポイントを解説します。
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この記事の目次[非表示]
- 1.内閣府の事業継続ガイドラインを使ったBCP(事業継続計画)の策定手順/BCP対策マニュアル
- 2.BCP(事業継続計画)とは?
- 3.BCP対策とは?
- 4.BCPのマネジメントプロセス、BCMとは?
- 5.BCP対策が必要な理由
- 6.BCP対策を行う目的
- 7.BCP対策の3つのメリット・効果
- 7.1.強い経営基盤により不測の事態にも対応できる
- 7.2.企業価値や企業への信頼性
- 7.3.自社の強みと弱みが明確化する
- 8.BCP対策、BCP(事業継続計画)策定の前提
- 9.(1) BCP対策、BCP(事業継続計画)の全体の方針を策定する
- 9.1.基本方針の策定
- 9.2.事業継続マネジメント(BCM)実施体制の構築
- 10.(2) BCP対策、BCP(事業継続計画)における分析・検討
- 10.1.事業影響度分析(BIA)を実施する
- 10.1.1.事業中断による影響度の評価
- 10.1.2.重要業務の決定と目標復旧時間・目標復旧レベルの検討
- 10.1.3.重要な要素の把握とボトルネックの抽出
- 10.2.リスクの分析・評価
- 10.2.1.① 発生事象の洗い出し
- 10.2.2.② リスクマッピング
- 10.2.3.③ 対応の対象とする発生事象によるリスクの詳細分析
- 11.(3) 事業継続戦略・対策の検討と決定
- 11.1.事業継続戦略・対策の基本
- 11.2.事業継続戦略・対策の検討
- 11.2.1.重要製品・サービスの供給継続・早期復旧
- 11.2.2.企業・組織の中枢機能の確保
- 11.2.3.システム保全
- 11.2.4.資金確保
- 11.2.5.法規制等への対応
- 11.2.6.行政、社会インフラ事業者の取組との整合性の確保
- 11.3.地域との共生と貢献
- 12.(4) BCP(事業継続計画)の策定/BCP対策マニュアル、作成手順
- 12.1.計画の立案・策定
- 12.1.1.事業継続計画(BCP)
- 12.1.2.緊急時の体制
- 12.1.3.緊急時の対応手順
- 12.1.4.事前対策の実施計画
- 12.1.5.教育・訓練の実施計画
- 12.1.6.見直し・改善の実施計画
- 12.2.計画等の文書化
- 13.(5) BCP対策における教育・防災訓練
- 13.1.教育・訓練の必要性
- 13.2.総務の方 必見!教育・訓練の実施方法
- 14.(6) BCP対策、BCP(事業継続計画) の見直し・改善
- 14.1.点検・評価
- 14.1.1.事業継続計画(BCP)が本当に機能するか?
- 14.2.事業継続マネジメント(BCM)の点検・評価
- 14.2.1.監査も重要
- 14.3.経営者による見直し
- 14.4.是正・改善
- 14.5.継続的改善
- 15.BCP対策での特に重要な3つの対策
- 15.1.【BCP対策1】自然災害への対策:地震、水害、竜巻、停電など
- 15.1.1.自然災害からの復旧における重要なポイント
- 15.2.【BCP対策2】外的要因への対策:製造業など取引先の会社の倒産、サイバー攻撃など
- 15.3.【BCP対策3】内的な要因への対策:不祥事が発生したリスクを考慮する(工場などでも!)
- 16.BCP対策、BCP策定時に注意すべきこと
- 16.1.自社の事業にマッチする独自の対策を構築する
- 16.2.社内・社外と連携した策定も検討
- 16.3.優先すべき事業を決めたうえで事業ごとの対策を策定
- 16.4.事前に想定できる対策の費用や、被る損失を分析する
- 16.5.BCP対策を実施する基準と手順を明確化
- 17.BCP対策を策定する上での問題
- 17.1.BCPの策定や共有には、時間とコストがかかる
- 17.2.想定通りに機能しない懸念
- 17.3.BCP対策、BCP策定のノウハウがない
- 18.海外のBCP事情
- 18.1.ハリケーン対策(アメリカ)
- 18.2.洪水対策(ドイツ)
- 18.3.サイバーセキュリティ対策(シンガポール)
- 18.4.森林火災対策(オーストラリア)
- 18.5.テロ対策(イギリス)
- 19.国内のBCP普及事情・レスキューナウ導入事例
- 20.DCP対策とは?
- 21.BCP対策に活用したいツールやICT・ITのサービス・ソフト・ソリューション
- 21.1.オールインワン危機管理サービス
- 21.2.安否確認システム・アプリ
- 21.3.リモートワークシステム
- 21.4.クラウドストレージ
- 21.5.災害情報を可視化するサービス
- 21.6."地図上で" 災害情報を可視化するサービス
- 21.7.事業所・取引先の被災状況を自動で集約・確認
- 21.8.課題相談窓口
- 22.新型コロナウイルス感染症によるテレワーク浸透でBCP対策に変化も。
- 23.よくある質問・用語解説
内閣府の事業継続ガイドラインを使ったBCP(事業継続計画)の策定手順/BCP対策マニュアル
内閣府の事業継続ガイドラインとは?
事業継続ガイドラインは、内閣府が策定し、我が国の企業・組織における事業継続の取組の必要性を説いています。
このほど2023年3月に改訂版が出されました。
主な改定内容は以下です。
- テレワークの活用に関する言及が増加
- オンラインを活用した意思決定を行える仕組みの整備に言及
- 情報セキュリティー強化に言及
事業継続ガイドライン(令和5年3月)▼
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf
内閣府のHP▼
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/sk_04.html
事業継続ガイドラインは、民間企業を主な対象としていますが、業種・業態・規模を問わず、全ての企業・組織が対象になっています。
事業継続ガイドラインの目的は、事業継続計画(BCP)を含めた事業継続マネジメント(BCM)の概要や必要性、有効性、実施方法、策定方法、留意事項等を示すことで、我が国の企業・組織の自主的な事業継続の取組を促し、国全体の事業継続能力の向上を実現することです。
このガイドラインが示すBCMは、企業・組織の事業(特に製品・サービス供給)の中断をもたらす自然災害が対象です。
具体的には、大事故、感染症のまん延(パンデミック)、テロ等の事件、サプライチェーン途絶、サイバー攻撃など、事業の中断をもたらす可能性がある、あらゆる発生事象についてについてです。
それでは、事業継続計画(BCP)を策定する上で必要になる事業継続マネジメント(BCM)全体を理解することで、事業継続計画(BCP)を体系的に解説します。
BCPを、BCM全体が包含する形で解釈する点は、今回の改訂から特に背景として色濃くなっていま
経済産業省、中小企業庁から中小企業BCP策定運用指針
中小企業へ(緊急時企業存続計画・事業継続計画)を普及させるために中小企業庁が中小企業BCP策定運用指針を提供しています。
BCP(事業継続計画)とは?
BCPは、日本語で事業継続計画、Business Continuity Planのことです。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など、不測の事態が発生しても重要な事業を中断させないようにしたり、中断してしまっても極力短い期間で復旧させるための方針・体制・手順などをまとめた計画を意味します。
※出典:内閣府「事業継続ガイドライン」事業継続計画(BCP)の概念。突発的に被害が発生するリスクの場合
※出典:内閣府「事業継続ガイドライン」事業継続計画(BCP)の概念。段階的かつ長期間にわたり被害が継続するリスクの場合
BCP対策とは?
まずはBCP対策とは何か、詳しく解説していきます。
BCPとは事業継続計画のことを指し、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など、不測の事態が発生する リスクから、企業の重要な業務を保護し続けるための計画です。
この計画はリスクマネジメントの一環として、また、事業運営に対するリスクを最小化するために策定されます。BCP対策はBCPに基づく対応策であり、いざ不測の事態が発生した際にも計画通りに実行するための体制を構築することを指します。
BCPのマネジメントプロセス、BCMとは?
BCM(事業継続マネジメント)とは
BCMは、Business Continuity Managementのことです。BCPの策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動を意味します。
BCMでは特に以下の3点が重要であり、これらが不十分である場合は、他の部分を充実させたとしても、効果は限定的となる可能性が高いと言われています。
- 不測の事態において事業を継続する仕組
- 社内の BCP 及び BCM に関する意識の浸透
- 事業継続の仕組及び能力を評価・改善する仕組
事業継続マネジメント(BCM)の全体プロセス
事業継続マネジメント(BCM)の流れですが、
方針の策定
↓
分析・検討
↓
事業継続戦略・対策の検討・決定
↓
計画の策定
↓
事前対策及び教育・訓練の実施
↓
見直し・改善
↓
(経営環境の変化に応じた発展的改善)
このように事業継続ガイドラインでは紹介されています。
企業の防災対策・災害対策、感染症対策
企業防災とはリスク管理です。リスク管理は、リスクを特定、評価、管理するためのプロセスです。企業は、自然災害、事故、人為的な災害など、様々なリスクを特定し、それぞれのリスクが事業活動に及ぼす可能性のある影響を評価して、リスクの軽減、回避、転嫁、受容といった対策を講じます。
企業の災害対策の具体的な取り組みとしては、災害リスク評価、防災計画の策定、防災訓練、備蓄品の準備などがあります。これらの取り組みにより、企業は災害時のダメージを軽減し、早期の回復を図ることが可能となります。
BCP対策が必要な理由
BCP(事業継続計画)対策が注目された理由
なぜ、BCPが重要視されるのでしょうか。近年、自然災害やパンデミックの影響を受け、企業の経営環境は大きく変わりました。それに伴い、BCP対策が注目されるようになったです。
特に日本では2011年の東日本大震災の発生により顕著になりましたが、世界に視野を広げてみると、実は2001年にアメリカで発生した同時多発テロによってBCPは大きく注目を集めるようになりました。
企業の経営を支えるには、突如として起きる可能性のあるリスクに備えることが重要です。BCP対策が注目される理由は、このようなリスクから企業活動を守る手段としての有効性が認められたからですし、「やらざるを得ない」状況になったからではないでしょうか。
企業においてリスクマネジメントは特に大事
企業にとってリスクマネジメントは欠かせない要素です。BCP対策はリスクマネジメントの一部であり、災害や事故、サイバー攻撃など予期しないリスクから企業の業績やブランド価値を守るための計画を策定することが求められています。
BCPの策定が義務付けられる業界も出てきています。例えば、2021年4月に介護報酬改定が行われ、施設系・在宅系を問わず介護事業所では2024年4月までにBCPの策定が義務化されました。
BCP対策を行う目的
BCP対策を行う目的は主に二つあります。
従業員を守る
一つ目は、従業員を守ることです。企業の最も大切な資産は人材であり、従業員がいないと事業が回りません。従業員の安全確保は企業にとって最優先課題です。災害時に従業員の命を守り、また、従業員が安心して働ける環境を維持することが、BCP対策を行う重要な目的となります。
企業価値を高める
二つ目は、企業価値を高めることです。災害や危機の発生によって企業として価値提供がストップしてしまう場合、その後の取引に支障をきたすことは理解いただけるかと思います。
災害などのリスクから事業を継続させることで、企業の信頼性を高め、事業の継続性を確保することで、企業価値の向上に繋がっていきます。
BCP対策の3つのメリット・効果
強い経営基盤により不測の事態にも対応できる
BCP対策を策定し、それを実行に移すことで、災害や緊急事態が発生した際にも業績が大きく揺れ動くことなく、事業を継続させる強い経営基盤を築くことができます。これは、企業の成長と発展に直結します。
企業価値や企業への信頼性
予期せぬ事態が発生した際でも事業を継続させることができる企業は、顧客や取引先からの信頼を得やすくなります。また、企業価値も向上し、投資家やステークホルダーからの評価も下げずに済みます。
自社の強みと弱みが明確化する
BCP対策を策定する過程では、自社の事業の強みと弱みが明確になります。どの業務が重要で、どの業務が中断されると大きな影響が出るのかを明確にすることで、効率的な経営を進めることができます。
これらのメリットを考えると、BCP対策を策定する意義は大きいと言えるでしょう。
BCP対策、BCP(事業継続計画)策定の前提
BCP対策、BCP策定においては、まず自社の業務とそのリスクを理解することが必要です。そして、そのリスクに対してどのような対策を行うかを具体的に策定し、それを全社的に共有することが求められます。
外部委託するか、自社で策定するか?
BCP対策、BCPの策定では、自社で行う場合と外部の専門機関に委託する場合があります。自社で行う場合には、自社の業務とリスクを深く理解している必要があります。
一方、外部に委託する場合には、専門的な知識と経験を活用してより効果的な対策を策定できます。どちらの方法を選ぶかは、企業の規模やリソース、リスクの性質によります。
内閣府の事業継続ガイドラインが役立つ!
BCP対策、BCP(事業継続計画)策定には、内閣府が発表している事業継続ガイドラインが役立ちます。事業継続のためのマネジメントシステムの設定方法について詳しく説明しており、BCP対策の策定に役立つヒントが満載です。
内閣府の事業継続ガイドラインは大変長文ですが、BCP対策のテンプレートとしてご活用いただくのも良いかと思います。
2023年3年に改訂されており、最新の情報はこちらを参考になさってください▼
中小企業庁の中小企業BCP策定運用指針が役立つ!
中小企業庁による「中小企業BCP策定運用指針」は入門コース、基本コース、中級コース、上級コースと4つのコースを準備しています。
中小企業の特性や実状にもとづいたBCP策定、継続的な運用の具体的な方法がわかりやすく解説されていますので、参考になさってください▼
やはり最初はマニュアルやフォーマットがあるとイメージしやすくなりますし、内閣府の事業継続ガイドラインや、中小企業庁の中小企業BCP策定運用指針はとても有用です。
(1) BCP対策、BCP(事業継続計画)の全体の方針を策定する
基本方針の策定
取引先等の利害関係者や社会一般からの自社の事業への要求・要請を経営方針や事業戦略に照らし合わせて整理することから始めましょう。
そして、自社の事業継続に対する考え方を示す基本方針を策定します。
さらに、事業継続の目的や BCMで達成する目標を決定します。
BCMの対象とする事業の種類や事業所の範囲なども明らかにしましょう。
これらは、BCMの基礎となるため、取締役会または経営会議の決議を経ることが適切であるとされています。
言うまでもないことですが、顧客や自社、関連会社、派遣会社、協力会社などの従業員の身体・生命の安全確保や、自社拠点における二次災害の発生の防止は、当然、最優先とすべきで、
地域への貢献や共生についても、可能な範囲で重要な考慮事項として取り上げることが推奨されています。
事業継続マネジメント(BCM)実施体制の構築
実施体制の責任者(BCMの責任者)と、 BCMの事務局のメンバーを指名し、関係部門全ての担当者によるプロジェクトチーム等を立ち上げましょう。
全社的な体制を構築する必要があります。
取組が進んで、BCPを策定した後も、この体制は解散しません。
事前対策及び教育・訓練の実施、継続的な見直し・改善を推進するための運用体制に移行させ、BCMを維持していく必要があります。
経営者はこの体制において、総括的責任と説明責任(=アカウンタビリティ)を負っています。
(2) BCP対策、BCP(事業継続計画)における分析・検討
事業影響度分析(BIA)を実施する
BIAとは、Business Impact Analysisのことです。
危機的な発生事象(インシデント)により自社の施設が大きな被害を受けたり、サプライチェーンが途絶したりすれば、事業・業務を継続することは困難となり、必要不可欠な業務から優先順位を付けて継続・早期復旧することが大切ですリスクが起こる頻度や重大度も考慮するとよいでしょう。
事業影響度分析(BIA)を行うことで、企業・組織として優先的に継続・早期復旧を必要とする重要業務を慎重に選び、いつまでに復旧させるかの目標復旧時間などを検討し、必要な経営資源を特定します。
事業中断による影響度の評価
自社の各事業が停止した場合に、その影響の大きさや変化を時系列で評価します。
顧客や取引先の経営判断では、「事業が停止するか否か」が重要なので、事業中断の原因に関わらずBIAを行う必要があります。
製品・サービスの供給が停止した場合の影響、時系列で定量的に評価します。
重要な製品・サービスを特定して、どのくらいの供給停止期間に耐えられるかを確認します。
影響度を評価する観点としては、
- 利益、売上、マーケットシェアへの影響
- 資金繰りへの影響
- 顧客の事業継続の可否など顧客への影響、さらに、顧客との取引維持の可能性への影響
- 従業員の雇用・福祉への影響
- 法令・条例や契約、サービスレベルアグリーメント(SLA)等に違反した場合の影響
- 自社の社会的な信用への影響
- 社会的・地域的な影響(社会機能維持など)
があります。
重要業務の決定と目標復旧時間・目標復旧レベルの検討
影響度評価の結果を踏まえ、優先的に継続・復旧すべき重要事業を絞り込ります。
アンケートやヒアリング調査などで情報を集めたりします。
さらに、この重要な事業に必要な重要業務について、
どれくらいの時間で復旧させるかを「目標復旧時間」(Recovery Time Objective、RTO)として、
どの水準まで復旧させるかを「目標復旧レベル」(Recovery Level Objective、RLO)として決定します。
そして、重要業務には優先順位をつけます。
重要な要素の把握とボトルネックの抽出
重要業務の実施に不可欠となる経営資源を把握します。
まず、重要な経営資源の全てを漏れなく洗い出さなくてはなりません。
ここが不十分だと、リソース確保の段階で苦労します。
そして、これらの経営資源の中から「ボトルネック」をあぶり出します。
ボトルネックは必要とされている量の確保が可能となるまでの時間をより早めない限り、重要業務の復旧をさらに早めたり、復旧レベルを上げたりすることができないものです。
リスクの分析・評価
事業影響度分析(BIA)と並行して、優先的に対応すべきリスク、つまり発生事象(インシデント)を把握するため、リスク分析・評価を実施します。
リスクの分析・評価は以下のステップです。
① 発生事象の洗い出し
事業の中断を引き起こす可能性がある発生事象を洗い出します。
この洗い出しについては、極力発生し得る全てのものを考慮します。
② リスクマッピング
①で洗い出された発生事象について、発生の可能性及び発生した場合の影響度について定量的・定性的に評価します。
優先的に対応すべき発生事象の種類を特定し、順位付けを行います。
③ 対応の対象とする発生事象によるリスクの詳細分析
②で優先的に対応すべきと特定した発生事象により生じるリスクについて、各経営資源や調達先、インフラ、ライフライン、顧客等にもたらす被害などを想定します。
(3) 事業継続戦略・対策の検討と決定
次に、それぞれの重要業務について、目標復旧時間や目標復旧レベルの達成を目指し、事業継続戦略とその実現のための対策を検討し、決定を行います。
この事業継続戦略は、自社としての重要な意思決定であり、自社の経営理念やビジョンなどを十分に踏まえ、経営全般と連関の取れたものとすることが必要です。つまり経営判断です。
事業継続戦略・対策の基本
事業継続戦略における検討の方向性は
- 第一に、想定される被害からどのように防御・軽減・復旧するか(=現地復旧戦略)、
- 第二に、もし利用・入手できなくなった場合にどのように代わりを確保するか(=拠点の代替戦略)、
の2つの観点が主です。
事業継続戦略・対策の検討
企業・組織が検討すべき事業継続戦略を検討する観点としては
- 重要製品・サービスの供給継続・早期復旧
- 企業・組織の中枢機能の確保
- 情報及び情報システムの維持
- 資金確保
- 法規制等への対応
- 行政・社会インフラ事業者の取組との整合性の確保
です。
重要製品・サービスの供給継続・早期復旧
BCM によって達成すべき目的の中心は、重要な製品・サービス供給の継続または早期復旧です。
そこで、事業継続戦略を検討する場合、この目的をどのように達成するかが、まず持つべき視点です。
事業継続戦略・対策は具体的には
①業務拠点に関する戦略・対策
拠点の建物や設備の被害抑止・軽減
拠点の自社内での多重化・分散化
他社との提携
在宅勤務、サテライトオフィスでの勤務
②調達・供給の観点での戦略・対策
適正在庫の見直しや在庫場所の分散化による供給継続
調達先の複数化や代替調達先の確保
供給先・調達先との連携
代替調達の簡素化
③要員確保の観点での戦略・対策
重要業務の継続に不可欠な要員に対する代替要員の事前育成・確保
応援者受け入れ(受援)体制・手順の構築、応援者と可能な範囲で手順等の共通化
調達先や連携先におけるBCM支援のための要員の確保
要員の安心安全で健康に配慮した対策を講じる
テレワークでの実施が可能な業務はテレワークを活用する
を行っていきます。
企業・組織の中枢機能の確保
企業・組織の本社などの重要拠点が大きな被害を受けた場合、中枢機能が停止する可能性があります。
それは事業継続上の重大な制約要因となるため、これを防ぐ戦略・対策が必要です。
経営者を含む対策本部、財務、経理、人事、広報等の各部署が機能するために不可欠な要員、設備等の経営資源の確保が必要です。
場合によってはオンラインでの対応も求められます。
さらに不測の事態に直面したとしても、企業・組織の活動が利害関係者から見えなかったり、何をしているのか全くわからない(=いわゆるブラックアウト)を起こすと、取引先が代替調達に切り替えるなど、自社の事業継続に利な状況が進んでしまいます。
復旧可能性の情報を発信できずに時間が経過すると、社会的責任を果たせないことに繋がりかねません。
そこで取引先、顧客、従業員、株主、地域住民、政府・自治体などへの情報発信や情報共有を行うための体制の整備、連絡先情報、情報発信の手段の確保なども必要です。
システム保全
情報システムを被災時でも使用できることが不可欠です。災害時はサーバーやネットワークに障害が発生する可能性もあります。重要な情報やシステムについてはバックアップをし、同じ発生事象(インシデント)で同時に被災しない場所に保存することが大切です。
資金確保
企業・組織が被災すると、資金繰り(キャッシュフロー)の悪化が懸念されます。
収入が減少・一時停止する一方で、給与や調達先等への支払いは継続しなければならなくなりがちです。
被害の復旧や代替拠点の立ち上げなどでも臨時的な資金がかなり必要になります。
平常時の事前対策のための資金も重要です。
民間や政府・自治体の災害時融資など検討するとよいでしょう。
保険、共済、デリバティブ、災害時融資予約、災害時ローンなど(事前に契約が必要です)
事前対策に活用できる融資(BCM格付融資、BCPの支援ローン等)
平常時から金融機関や取引先、親会社と資金面でのコミュニケーションを持つことも重要です。
法規制等への対応
想定する発生事象(インシデント)により企業・組織が被害を受けたとしても、法令や条例による規制その他
の規定は遵守する必要があります。
行政、社会インフラ事業者の取組との整合性の確保
政府・自治体、指定公共機関などの社会インフラ事業者のBCP・BCM、防災業務計画、地域防災計画等と整合性を持たせるよう努めましょう。
地域との共生と貢献
緊急時における企業・組織の対応として、自社の事業継続の観点からも、地域との連携が必要です。
重要な顧客や従業員の多くは地域の人々である場合も多く、また、復旧には、資材や機械の搬入や工事の騒音・振動など、周辺地域の理解・協力を得なければ実施できない事柄も多いためです。
各企業・組織が自己の利益のみを優先し、交通渋滞の発生、物資の買占めなど、地域の復旧を妨げる事態につながることは避けるべきです。
(4) BCP(事業継続計画)の策定/BCP対策マニュアル、作成手順
ここまで述べてきた戦略・対策の決定を踏まえて以下の計画を策定します。
- 事業継続計画
- 事前対策の実施計画
- 教育・訓練の実施計画
- 見直し・改善の実施計画
計画の立案・策定
事業継続計画(BCP)
事業継続計画(BCP)は、BCMとほぼ同じ意味で使われることが多かったのですが、このガイドラインでは、近年、国際的にも使われている BCPの意味、つまり、危機的事象の対応計画を指すものと定義されています。
被災後の重要業務の目標復旧時間、目標復旧レベルを実現するために実施する戦略・対策、対応体制、対応手順などが含まれます。
BCPにおいては、特定の発生事象(インシデント)による被害想定を前提にするものの、
BCMが「どのような危機的事象が発生しても重要業務を継続する」という目的意識を持って実施されることも認識し、
被害の様相が異なっていても可能な限り柔軟さも持つように策定することが推奨されています。
さらに、予測を超えた事態が発生した場合には、策定したBCPにおける個々の対応に固執せず、それらを踏まえて、臨機応変に判断していくことが大切です。
なので、BCPが有効に機能するためには、経営者の適切なリーダーシップが求められるということです。
緊急時の体制
不測の事態に対応するべく、事業継続のための緊急的な体制を定め、関係者の役割・責任、指揮命令系統を明確に定めます。
責任者は、経営者が担う必要があります。
重要な役割を担う者が死傷したり連絡がつかなかったりする場合に備え、権限委譲や、代行者及び代行順位も定めます。
緊急時には非日常的な様々な業務が発生するため、全社の各部門を横断した、事業継続のための特別な体制を作ってもよいとされています。
また、災害時の初動対応や二次災害の防止など、各担当業務、部署や班ごとの責任者、要員配置、役割分担・責任、体制などを定めることも必要です。
緊急時の対応手順
この対応手順は、重要業務を目標復旧時間内に実施可能とするために定めるものです。
事象発生後においては、実施する業務の優先順位を見定めることも重要です。
初動段階で実施すべき具体的な事項のうち、手順や実施体制を定め、必要に応じてチェックリストや記入様式を用意すべきです。
初動対応が落ち着いたら、事業継続対応に移行します。
この対応を行うに当たり実施すべき事項のうち、手順や実施体制を定め、必要に応じてチェックリストや記入様式を用意すべきです。
実施主体 |
実施事項 |
|
項目 |
詳細 |
|
対策本部(本社 及び各拠点) |
参集及び対策本 部の立ち上げ・指揮命令系統の確立 |
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建物、設備、従業 員等経営資源の被害状況の確認 |
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顧客・従業員の安全確保及び物資配給 |
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二次災害の防止 |
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自社の状況につ いての情報発信 |
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事業継続計画(BCP)の発動 |
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対応の記録 |
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各従業員 |
自身及び周囲の 安全確保(勤務 先、出先、自宅で共通) |
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自身の安否につ いての報告(同 上) |
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初動が落ち着いた後、然るべき権限者は、あらかじめ定められた基準に基づき、事業継続計画(BCP)発動の要否を判断し、発動となっ た場合、事業継続体制へ移行します。
この対応を行うに当たり実施すべき事項のうち、手順や実施体制を定め、必要に応じてチェックリストや記入様式を用意すべきです。(次表を参照)
実施主体 |
実施事項 |
|
項目 |
詳細 |
|
対策本部・事 業継続組織 (本社及び重 要業務の拠 点) |
自社の事業継続に 対して、求められている事項の確認、 調整 |
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現拠点、代替拠点 での事業継続の能力・可能性の確認 |
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実施する戦略や対策の決定 |
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業務の継続・再開 |
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自社の状況についての情報発信 |
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平常時の体制への復帰 |
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対応の記録 |
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事前対策の実施計画
戦略とともに決定した対策の中で、平常時から順次実施すべきもの(いわゆる事前対策)について、必要に応じて詳細な内容を詰め、実施のための担当体制を構築し、予算確保を行い、必要な資源を確保し、調達先・委託先を選定する必要があります。
そこで、これらについて、その実施スケジュールを含め、具体的な「事前対策の実施計画」を策定します。
特に、決定された目標復旧時間、目標復旧レベルを達成できるようにする前提として早急に実施すべきとされた事前対策は、実施が遅延しないよう十分留意しなければなりません。
- 対応拠点(本社内など)、代替拠点等でのマニュアル、パソコン、電話回線、机、各種書類、事務機器、設備などの設置または確保
- 通信、電源、水をはじめライフラインの代替対策(自家発電、回線多重化など)
- 現拠点の建物、設備等の防御のための対策(耐震補強、防火対策、洪水対策、テロ対策など)
- 情報システムのバックアップ対象データ、バックアップ手順、バックアップシステムからの復帰手順の決定
- 重要な情報・文書(バイタルレコード)のバックアップの実施
- 代替拠点での代替供給体制の整備を含む業務拠点の多重化・分散化
- テレワークのための環境の整備(在宅勤務用パソコン、リモートアクセス環境、情報セキュリティ対策等)
- 調達先(原材料、部品、運輸その他のサービス)や販売先の複数化
- 提携先の選定と協定等の締結(OEM、支援協定の締結等)
- 在庫の増強や分散化
- 代替人材の確保・トレーニング
- 資金確保対策
- 備蓄品83、救助用器具等の調達
教育・訓練の実施計画
事業継続を実現するには、経営者、その他の役員、従業員が、BCMにおける各役割に応じて、一定の能力・力量を持つことが必要です。
そこで、これらを獲得できるよう、教育・訓練を行うことが大切です。
その体系的かつ着実な実施のため、教育・訓練の実施体制、年間の教育・訓練の目的、対象者、実施方法、実施時期等を含む「教育・訓練の実施計画」を策定する必要があります。
そして、BCMの実効性を維持するためには、体制変更、人事異動、新規採用などによる新しい責任者や担当者に対する教育が特に重要で、これらへの対応もこの計画において十分踏まえる必要があります。
概要 |
実施方法(例) |
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教育
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事業継続の概念や必要性、想定する発生事象(インシデント)の概要など |
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講義、ワークショップ、e ラーニング等による |
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専門文献や記事の購読 |
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訓練 |
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クロストレーニング:欠勤者が出た場合にその重要業務の代替を可能とするため、他の重要業務の担当者とお互いに相手方の業務を訓練する |
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内容確認(ウォークスルー):BCP やマニュアルに基づき、役割分担、手順、代替先への移動、確保資源の確認等を机上訓練などにより行う |
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反復訓練(ドリル):重要な動作等を繰り返して行うことで身に付ける実働訓練で、避難訓練、消防訓練、バックアップシステム稼動訓練、対策本部設営訓練などがある |
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以下のような様々な訓練の要素を適宜組み合わせ、実効性の高い訓練を実施する。感染症のまん延時などを想定し十分な要因が参集できないケースも訓練しておくとよい
さらには、発展的な訓練として以下のような訓練がある
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見直し・改善の実施計画
BCMの点検、経営者による見直し、継続的な改善を確実に行っていくため、「見直し・改善の実施計画」を策定し、体制、スケジュール、手順を定め、それに基づき見直し、改善、着実に実施していく必要があります。
計画等の文書化
計画については、必要なものは確実に文書化(電子媒体含む)をします。
必要に応じ、部門や拠点別、役割別にも計画書として文書に落とし込むことが重要です。
実際の作業を円滑にするために、マニュアル、チェックリスト等も必要です。
ただし、文書化自体が目的とならないよう、十分に注意しましょう。
そして、緊急時に使用するBCP、マニュアルなどは、対応者に配布し、常に活用できるようにします。
ただし、個人情報や機密情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
(5) BCP対策における教育・防災訓練
教育・訓練の必要性
BCMを実効性のあるものとするためには、経営陣・従業員に事業継続の重要性を共通の認識として持たせ、その内容を社内に「風土」や「文化」として定着させることが重要です。
BCPを紙面や社内向けHPなどに記載して周知するだけでは、全ての関係者が実践できるはずがなく、教育と訓練が必須です。
訓練の目的は、
- 知識として既に知っていることを実際に体験させることで、身体感覚で覚えさせること
- 手順化できないその都度の判断が必要な事項について、適切な判断・意思決定ができるようにする能力を鍛えること
- BCPやマニュアルの検証をすること
などです。
有事にはマニュアル等を読んでいる暇はありませんので、BCPやマニュアルを熟知したメンバーを平時にあらかじめ育成しておくことも大切です。
関連する他の企業・組織との連携訓練も実施することも望ましいです。
総務の方 必見!教育・訓練の実施方法
教育・訓練では、講義、対応の内容確認・習得、意思決定、実際に体を動かす等、対象や目的に合わせて様々な教育・訓練を行うことが大切です。
実施のタイミングは、定期的(年次で、など)に行ったり、体制変更、人事異動、採用等により組織に大幅な変更があったときや、BCPの見直し・改善を実施したときに行います。
訓練にもいろいろな種類があります。
- 通報訓練
- 初期消火訓練
- 応急手当訓練(心肺蘇生、AEDなど)
- 救助訓練(シミュレーション訓練)
- 避難訓練
- 帰宅困難対策訓練
- 安否確認訓練
- リモート防災訓練
- 自衛消防隊編成訓練
- インストラクター育成訓練(自衛消防隊向け)
- 情報収集訓練(CMT向け)
- 災害対策本部立ち上げ訓練
- 意思決定訓練
- 避難所訓練
- 炊き出し訓練
- 住民協力要請の訓練
- 避難所運営ゲームHUG(ハグ)
- 発災対応型防災訓練
- 災害図上訓練DIG
- 災害対応カードゲーム「クロスロード」
- 図上シミュレーション訓練
- シェイクアウト訓練
- グループワーク
- 噴火を想定した訓練
- 水防防災訓練
- 不審者対応訓練
- 地震体験訓練
- 消防機器、防災用品操作訓練
防災訓練についてはこちらのブログがおすすめです▼
(6) BCP対策、BCP(事業継続計画) の見直し・改善
BCMの有効性低下やBCPの陳腐化を防ぐため定期的(年1回以上)に点検を行うことが必要です。
自社の事業戦略や次年度予算を検討する時や、事業や社内・外部に大きな変化があったときにも見直しを行うべきです。
BCPを発動した場合もその反省を踏まえてBCMの見直しを実施することが大切です。
点検・評価
事業継続計画(BCP)が本当に機能するか?
策定したBCPによって重要業務が目標復旧時間や目標復旧レベルを本当に達成できるのかを確認します。
まずは、達成の前提として実施が決まっていた事前対策の進捗を確認し、その効果が発揮されるかを確認(試験)します。
さらに、
- 復旧に必要な資機材がBCPに定めた時間内に調達できるか?
- 情報システム停止に備えた手作業での業務処理量が計画通りか?
など、達成可能性を左右する事項を調査します。
事業継続マネジメント(BCM)の点検・評価
BCMでは、人事異動や取引先の変更等による当然に必要な修正がそもそも行われているか?が点検が必要です。
また、
- 事業所
- 製造ライン
- 業務プロセス等の業務実施方法の変更
- 新製品・サービスの提供開始
- 新たな契約締結などの事業の変化
- 利害関係者からの要求、法令改正などの環境変化
などなど、
このような変化にBCMが合致しているか、必要な変更が行われているかという観点で点検・評価を行います。
さらには、取引先の点検など、サプライチェーンの視点で点検・評価を行う必要もあります。
加えて、
想定している発生事象(インシデント)の種類や被害想定を拡大・拡充すべきではないか?
対象事業の種類や事業所の範囲などを広げるべきではないか?
といった、BCMの拡充における観点での点検・評価を行うことも必要です。
監査も重要
さらに、BCMが進んでいる企業・組織においては、監査の活用も有効です。
適切性・有効性等などの観点から、以下の項目を年1回以上定期的に検査することが必要です。
- 事前対策、訓練、点検等がスケジュール通り実施されているか、予算は適切に執行されているか
- 事業継続戦略・対策は有効か、費用対効果は妥当か
- 教育・訓練は目標を達成しているか
- 業界基準やベストプラクティス等と比較して重大なギャップはないか
- 自社の事業継続能力が向上しているか
監査には、社内のメンバーで実施する内部監査と、外部機関による外部監査があります。
監査の結果は経営者に報告されるべきです。
経営者による見直し
BCMの事務局は、準備として、前回の経営者による見直しにより指示された事項や、その後のBCMの進捗状況、点検や訓練の結果などから明らかになったBCM の弱点や問題点、課題、未対応の残存リスクを整理する。その中から経営者と議論し判断を仰ぐ内容を選定する。
一方で、経営者としても、BCM事務局に対してBCMの見直しの要点をあらかじめ指示することも大切です。
特に、自社の事業、経営環境、利害関係者からの要求の変化などには十分留意が必要で、これらとBCMが適合しているかについて見直していく必要があります。
BCMについて監査が行われている場合には、経営者が監査結果の報告を受け、見直しの議論内容を把握しなければなりません。
当然ですが、その後の見直しもしっかり関与することが求められます。
是正・改善
点検・評価で見つかった問題のうち、経営判断が必要ない実務的なものは早急に是正します。(定期的に経営者に報告)
調査や分析、予算の確保、調整、必要なものは、BCMの継続的な改善のプロセスに持ち込み、常に進捗管理を行いましょう。
継続的改善
経営者、BCM事務局、企業・組織全体として、
・BCMの適用範囲や対象リスクなどが妥当なものであるか?
・事業継続戦略や対策が有効なものであるか?
など評価し、これらの観点から継続的に改善していくことが必要です。
この改善は「風土」や「文化」として定着させ、継続していくことが大切です。
BCP対策での特に重要な3つの対策
【BCP対策1】自然災害への対策:地震、水害、竜巻、停電など
自然災害はBCP対策の中心的なテーマです。地震や水害、台風、竜巻、停電など、事前に予測が難しい自然災害に対しては、地域の特性や過去の経験を基にした予防策や、被災後の迅速な復旧策を構築することが重要です。
自然災害からの復旧における重要なポイント
自然災害からの復旧には、適切な設備・システムの復旧プロセス、代替拠点での業務継続、そして復旧に向けた資金計画などが必要です。このあたりはBCP(事業継続計画)を策定する段階で綿密な調査と検討をしておきましょう。
また、事業所や工場が集中している地域に大規模な自然災害が発生した場合、物流や通信網などの社会インフラの復旧が企業活動の復旧に影響を与えるため、地域全体での協力体制も重要となります。
【BCP対策2】外的要因への対策:製造業など取引先の会社の倒産、サイバー攻撃など
取引先の倒産やサイバー攻撃など、企業外部からのリスクに対するBCP対策も重要です。
取引先の倒産に備えるためには、取引先の信用状況の監視や代替取引先の確保などが必要です。
サイバー攻撃に対しては、そもそもの事前の対策において適切なセキュリティ対策が大切ですし、攻撃を受けた際の事業継続計画を策定することが求められます。
【BCP対策3】内的な要因への対策:不祥事が発生したリスクを考慮する(工場などでも!)
企業内部で不祥事が発生した場合のリスクも忘れてはなりません。こういったリスクは思わぬところから出てくることがあります。
建設業や製造業の事例、医療の現場での事例など枚挙にいとまがありません。
製品(商品)の欠陥や不正行為が発覚した際の危機管理計画や、企業の信用回復策を策定し、あらかじめ対応をシミュレートしておくことが重要です。
BCP対策、BCP策定時に注意すべきこと
自社の事業にマッチする独自の対策を構築する
自社の業態、事業内容、地域特性などを考慮した、自社の事業にマッチした独自の対策を構築することが重要です。一方で、全てを自前で対応するのではなく、必要に応じて外部の専門家やサービスを活用することも有効な手段となります。
特にBCP対策、BCP策定後にどう維持・発展させていけばいいのか、どう訓練していけばいいのかは、多くの企業が悩んでいる部分です。
上記レスキューナウの相談窓口にもかなりの相談がくる部分です。
社内・社外と連携した策定も検討
社内全体での協力はもちろんのこと、取引先や地域社会、行政など社外との連携も重要です。
取引先や地域社会との協力体制を築くことで、災害時の援助や情報共有をスムーズに行うことができます。また、地域全体での協力体制を築くことで、地域の復興速度を上げることも期待できます。
企業としては地域に貢献しながらも、逆に地域の恩恵を受けられる環境ができると理想ではないでしょうか。
優先すべき事業を決めたうえで事業ごとの対策を策定
全ての事業を同じレベルで継続するのは困難な場合もあります。そのため、優先すべき事業を決め、事業ごとに具体的な対策を策定することが求められます。
「選択と集中」で、集中すべき事業は何なのか、リソースをどこに振り分けるかを予め想定しておく戦略が大事です。
事前に想定できる対策の費用や、被る損失を分析する
災害や事故が発生した際の事業停止による損失を事前に分析し、それに見合ったBCP対策を策定することが重要です。これにより、事業継続のための投資と潜在的なリスクとをバランスよく管理することが可能になります。
損失がゼロなことに越したことはないのですが、損失を出さずに乗り切るのはなかなか難しいものです。ただ、ゼロにできないにせよ、出来るだけ損失を抑えることは、事前の対策やBCPを発動した後のスムーズな対応により可能になります。
BCP対策を実施する基準と手順を明確化
災害や事故が発生した場合の対応手順を明確にしておくことで、迅速かつ的確な対応を可能にします。また、どのレベルの災害や事故からBCP(事業継続計画)を発動するのかを明確にしておくことも重要です。
これらのポイントを踏まえて、各社はBCP対策を進めていくことで、不測の事態においても事業を継続し、ステークホルダーへの責任を果たし、企業価値を守れる確率を高めることができます。
BCP対策を策定する上での問題
BCPの策定や共有には、時間とコストがかかる
BCPの策定や共有には、それなりの時間とコストが必要です。
BCPの領域においてよく言われるのが「まだ起こってないことにコストはそんなにかけられない」ということだと思います。もちろん企業として利益を出す上で無駄なコストは極力減らさなければなりませんが、BCP関連に必要な時間とコストは、災害時に事業を継続するための重要な投資と考えるべきです。
補助金を利用できるケースもあるので、「コストがネックで対策ができない」、といったことにはならないようにしたいものです。
想定通りに機能しない懸念
策定したBCPが想定通りに機能しない場合もあります。そのため、定期的な見直しと訓練が必要であり、その中で問題点を見つけ出し改善を行うことが大切です。
災害や危機が発生した際は、全てが予想外の展開に進んでしまう可能性もありますが、だからといって計画が必要ないわけではありません。BCPを策定しておくことで、次に何をしなければならないかを想定しながら復旧していくことが可能になります。
BCP対策、BCP策定のノウハウがない
BCP対策、BCP策定のためのノウハウがない場合、専門家の助けを借りる、または研修を受けるなどの方法があります。初めてでも問題なく策定できるような便利なガイドラインも上述したのでぜひご参考になさってください。
海外のBCP事情
海外でのBCP対策事例をご紹介します。下記はその国だけでやられているものではなく他の国々でも実施されていますが、よく事例として見られるものをご紹介いたします。
ハリケーン対策(アメリカ)
アメリカはハリケーンの多発地域として知られており、BCP対策は重要です。アメリカの企業や自治体は、災害発生時の従業員の安全確保や重要な業務の継続を目指して、避難計画や通信インフラのバックアップ、遠隔作業などの対策を取っています。
洪水対策(ドイツ)
ドイツは洪水が発生しやすい地域でもあります。ドイツの企業や自治体は、洪水によるインフラの破壊や従業員の安全を確保するために、早期警戒システムや避難計画の策定、バックアップ電源の導入などの対策を行っています。
サイバーセキュリティ対策(シンガポール)
シンガポールはデジタル経済が発展しており、サイバーセキュリティリスクへの対策が重要です。シンガポールでは、企業や政府がサイバーセキュリティ専門の部署を設置し、情報セキュリティの監視や復旧力の向上を図るなど、サイバーセキュリティに関するBCP対策を実施しています。
森林火災対策(オーストラリア)
オーストラリアは広大な森林地帯があり、森林火災が頻発します。オーストラリアでは、火災リスクの予測・監視システムの整備、避難計画の策定、火災時の情報共有やコミュニケーションの強化など、森林火災に対するBCP対策が行われています。
テロ対策(イギリス)
イギリスは過去にテロ攻撃を経験しており、テロリズムに対するBCP対策が重要です。イギリスでは、警察や治安部門との連携強化、施設や公共交通機関のセキュリティ対策、従業員への訓練や意識啓発など、テロ対策に関するBCP対策が実施されています。
国内のBCP普及事情・レスキューナウ導入事例
海外に比べ、日本ではまだBCP対策が十分に普及していないという現状があります。しかし、近年の自然災害の増加や新型コロナウィルスの影響を受け、その重要性が見直されつつあります。
ここでは、弊社レスキューナウのBCP関連のサービスの導入事例をご覧いただくことで、どのような形でBCPが普及しているのか解説します。
安否確認
大手企業では、地震や台風などの災害時に、従業員の安否を確認するシステムを導入しています。これにより、迅速な従業員の確認と、必要な対応を行うことが可能になっています。
拠点管理
複数の拠点を持つ企業では、各拠点のリスクを評価し、それに応じた対策を行っています。これにより、一部の拠点が被災した場合でも、他の拠点で事業を継続することが可能になっています。
情報収集
災害情報や気象情報をリアルタイムで収集し、必要な対策を行う企業もあります。これにより、事前に対策を行うことで、被害を最小限に抑えることが可能になっています。
災害情報や危機情報のソリューションを社内システムにうまく連携させて運用している企業もあります。
DCP対策とは?
DCP(District Continuity Plan)対策とは、地域継続計画のことです。
被災時に優先して復旧すべき箇所や、予めハード対策を講じておくべき箇所を事前に計画を立てておきます。地域で合意形成をとった上で決定し、発災の直後から各組織が戦略的に行動できる指針となるような計画です。
BCP対策が主に企業単位であるのに対して、DCP対策は地域まで広げた継続計画と言えます。
BCP対策に活用したいツールやICT・ITのサービス・ソフト・ソリューション
オールインワン危機管理サービス
安否確認システムと拠点管理システムと、災害・危機の情報収集、要対応事項の集約をすべて一つのシステム上で行えるサービスです。
安否確認システム・アプリ
災害時に迅速な安否確認を行うためのシステムやアプリケーションは、BCP対策に欠かせません。これにより、従業員の安全確認と迅速な対応が可能になります。
リモートワークシステム
災害時に事業を継続するためには、リモートワークが可能なシステムが必要です。これにより、オフィスに出勤できない状況でも、従業員が自宅から業務を続行することが可能になります。
クラウドストレージ
重要なデータはクラウドにバックアップをとることで、オフィスの設備が被災してもデータを失うことなく、事業を継続することが可能になります。
災害情報を可視化するサービス
BCP対策を推進するためのサービスの一つで、各拠点の情報を一元管理できるシステムを導入することで、状況に応じた迅速な対応が可能になります。
"地図上で" 災害情報を可視化するサービス
災害発生時の最新の地図情報を提供し、拠点の安否情報や復旧状況などを地図上で一目で把握することができます。これにより、状況判断や対策の立案を迅速に行うことが可能になります。
事業所・取引先の被災状況を自動で集約・確認
システムの稼働状況や設備の安全性などの報告を自動で集約することができるツールです。これにより、問題が発生した際に迅速に対応することが可能になります。
課題相談窓口
BCP対策に関する課題や疑問を専門家に直接相談できる窓口では、言語化できないようなBCP担当者の悩みまで解決を日々支援しています。
新型コロナウイルス感染症によるテレワーク浸透でBCP対策に変化も。
昨今の新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークを導入する企業が増えました。
というよりテレワークを導入をせざるを得ない状況になったわけですが、災害が発生するのは夜間、休日であることも多く、平日であっても通勤がしにくい状況も多々あります。
これまではリモートで業務を遂行する環境や社会の受容があまりありませんでしたが、コロナによって一気にテレワークする人が増えました。
テレワークで業務が完結できる環境を作っておくことが、事業継続の観点でも重要性が認識されています。
よくある質問・用語解説
BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)とは?
こちらをご覧ください。
BCM(Business Continuity Management)とは?
こちらをご覧ください。
アウトソーシングとは?
業務等を外部の企業・組織等に委託することです。
クリティカルパスとか?
プロジェクトの作業工程にいくつかの分岐がある場合、最短時間で全ての工程を終了できる作業経路のこと。
この経路上で遅れが生じると他の工程にも影響が出るため、重点的に監視する必要があります。
災害時ローンとは?
地方公共団体によっては、災害貸付制度を持ち、地震、大火、風水害等の被災者に融資を行っています。
融資対象及び融資条件は地方公共団体のホームページなどに掲載されています。
中小企業に対する融資については、政府系金融機関が災害復旧貸付制度を設けています。
災害時融資予約とは?
あらかじめ契約しておくことで、銀行が、災害発生時に、事前に設定した融資限度枠や金利条件等に基づき、融資を実行することを約束する制度です。
サプライチェーン(供給網)とは?
供給者から消費者までを結ぶ、開発・調達・製造・配送・販売の一連の業務のつながりのことです。
サプライチェーンには、供給業者、メーカー、流通業者(卸売業者)、小売業者、消費者などが関係する。
また、取引先との間の受発注、資材・部品の調達、在庫、生産、製品の配達などを統合的に管理、効率化し、企業収益を高めようとする管理手法を「サプライチェーン・マネジメント」と呼びます。
事業影響度分析(BIA: Business Impact Analysis)とは?
事業の中断による、業務上や財務上の影響を確認するプロセスのことです。
本文もご参照ください。
ハザードマップとは?
被害予測図のこと。地域や都市の状況に合わせ、危険情報を公開・掲載する取組が地方公共団体で進んでいます。
ブラックアウトとは?
企業・組織と関係者の間で双方向の情報交換ができない状態です。
ボトルネックとは?
事業の継続や業務復旧の際にその要素がないと全体の進行が立ちゆかなくなってしまうものです。
マネジメントシステムとは?
経営におけるひとつの標準化された手法。一例として、経営者が参加し、方針、計画(Plan)、実施(Do)、評価(Check)、見直し(Act)を繰り返す。
リスクマッピングとは?リスクマップとは?
事業の中断を引き起こす可能性がある発生事象(インシデント)について、発生の可能性及び発生した場合の影響度の二軸の図にマッピングをするのがリスクマッピングで、リスクマップはマッピングしたものです。
以上、BCP対策について徹底的に解説してまいりました。企業の存続と成長を考える上で、BCP対策は避けて通れない大切なテーマです。今回の記事が皆さまのBCP対策に役立つ一助となれば幸いです。